電通は2026年3月5日、「2025年 日本の広告費」を発表しました。総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で4年連続過去最高を更新。インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)に到達し、構成比が50.2%と初めて総広告費の過半数を超えました。
この記事では2025年版のデータを中心に、前年(2024年版)との比較も交えながら、運用型広告に携わる実務者の視点で読み解きます。
全体像:8兆円を突破した広告市場
| 項目 | 2025年 | 前年比 | 2024年(参考) |
|---|---|---|---|
| 総広告費 | 8兆623億円 | 105.1% | 7兆6,730億円 |
| インターネット広告費 | 4兆459億円 | 110.8% | 3兆6,517億円 |
| マスコミ四媒体広告費 | 約2.3兆円 | 微増 | 2兆3,363億円 |
インターネット広告費が総広告費の半分を超えたことは、数字上の節目にとどまりません。広告予算の配分がデジタルを前提に設計される時代に完全移行したことを意味します。
インターネット広告媒体費の内訳(2024年版 詳細分析より)
2025年版の詳細分析は2026年3月12日に電通デジタルから公表される予定です。ここでは2024年版の詳細データを基に、運用型広告の構造を把握します。
取引手法別
| 取引手法 | 金額(2024年) | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 運用型広告 | 2兆6,095億円 | 111.1% | 88.1% |
| 予約型広告 | 2,789億円 | 105.4% | 9.4% |
| 成果報酬型広告 | 727億円 | 99.3% | 2.5% |
インターネット広告媒体費の88.1%が運用型です。予約型・成果報酬型を合わせても12%に満たない状況で、広告配信の「標準」が運用型であることは疑いようがありません。
成果報酬型(アフィリエイト等)が唯一前年を下回りました。薬機法や景品表示法の規制強化が影響している可能性がありますが、電通の一次情報では背景は明示されていません。
広告種別
| 広告種別 | 金額(2024年) | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 検索連動型広告 | 1兆1,931億円 | 111.2% | 40.3% |
| ビデオ(動画)広告 | 8,439億円 | 123.0% | 28.5% |
| ディスプレイ広告 | 約7,640億円 | - | 25.8% |
2024年に注目すべきは、ビデオ広告がディスプレイ広告を構成比で初めて上回ったことです。2025年にはビデオ広告が1兆275億円(前年比121.8%)に到達し、初の1兆円を突破しています。
ソーシャル広告
| 項目 | 金額(2024年) | 前年比 |
|---|---|---|
| ソーシャル広告 合計 | 1兆1,008億円 | 113.1% |
| SNS系 | 4,550億円 | 構成比41.3% |
| 動画共有系(YouTube等) | 4,054億円 | 構成比36.8% |
ソーシャル広告も2024年に初の1兆円超えを記録しました。動画共有系(YouTube等)の比重が高まっているのは、ショート動画広告の成長を反映しています。
運用型広告の視点で読む5つのポイント
1. 運用型広告は「標準」になった
構成比88.1%という数字は、運用型広告が広告の一形態ではなく、デジタル広告そのものであることを示しています。「運用型広告を導入すべきか」という問いはもはや過去のもので、「どう運用するか」「どの媒体をどう組み合わせるか」が唯一の論点です。
2. 動画広告がディスプレイを超えた構造的意味
動画広告がディスプレイ広告を上回った背景には、2つの流れがあります。
- 縦型ショート動画(TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts)の急拡大
- コネクテッドTV(TVer、ABEMA等)での視聴増加
これは広告主の関心が「クリック誘導」から「視聴・エンゲージメント」へ移行しつつあることの反映です。ファネル設計においても、認知とコンバージョンの中間を狙う動画広告の役割が大きくなっています。
テレビメディア関連動画広告費が653億円(前年比147.4%)と急伸していることも、CTV広告の本格離陸を示しています。
3. 検索広告の成長は構造的なもの
検索連動型広告は2023年に初めて1兆円を突破し、2024年には1兆1,931億円まで拡大しました。前年比111.2%は安定的な成長です。
この成長は景気連動だけでは説明できません。P-MAXキャンペーンをはじめとするAI自動入札の普及が、出稿ハードルの低下と運用効率の改善をもたらし、新規広告主の参入と既存広告主の投資拡大の両面で成長を支えていると考えられます。
4. ECプラットフォーム広告は2,000億円規模で安定
物販系ECプラットフォーム広告費は2,172億円(前年比103.4%)でした。Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングなどの広告事業が含まれます。成長率は他カテゴリより穏やかですが、2,000億円規模の市場として定着しています。
なお、電通の調査では「リテールメディア」という区分は使われていません。「物販系ECプラットフォーム広告」として捕捉されている点に留意が必要です。
5. マスコミ四媒体は微増にとどまる
マスコミ四媒体広告費は2兆3,363億円(2024年、前年比100.9%)で微増にとどまりました。インターネット広告費(3兆6,517億円)との差は約1.3兆円に広がっています。
テレビメディアは1兆7,605億円で微増ですが、デジタルシフトが進んでいます。テレビ局による見逃し配信プラットフォーム(TVer等)を通じた広告収入が、テレビメディア関連動画広告費として計上されています。
運用型広告担当者のアクションポイント
今回のデータから示唆されることを3点にまとめます。
- 動画広告への投資を検討していない場合は、ショート動画とCTV広告を含めたメディアミックスの見直しが急務。市場の構造変化は「いつかやるべきこと」から「すでに遅れている可能性があること」に変わりつつある
- 検索広告は今後もAI自動入札の進化とともに成長が見込まれる。P-MAXやインテントマッチを活用した自動化の取り組みは、市場全体のトレンドと合致している
- ECプラットフォーム広告(リテールメディア)は2,000億円規模に成長しており、EC事業者にとっては自社商品の露出戦略の一部として無視できない存在になっている