世界のPPC運用者を対象にした年次調査「The State of PPC Global Report 2026」が公開されました。PPCsurvey.comが2022年から発行している調査の第4版で、全72ページがメール登録なしで無料公開されています。
運用型広告の「世界の空気」を定点観測できる貴重な資料です。この記事では、レポートの要点と日本の運用者への示唆を整理します。
調査の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行元 | PPCsurvey.com(第4版) |
| 調査期間 | 2025年11月17日〜12月24日 |
| 回答者 | 50か国以上の1,306人(過去最大) |
| 地域構成 | 欧州大陸45.8%・北米29.4%・英国アイルランド12.8%ほか |
| 属性 | 代理店+フリーランス70%・インハウス23% |
主要な調査結果
「PPCは2年前より難しくなった」が53%(前回調査49%から上昇)。「易しくなった」は16%にとどまりました。難しくなった要因として、広告技術のブラックボックス化と、プライバシー規制による計測精度の低下(シグナルロス)が繰り返し挙げられています。
2026年の優先課題は「効率・収益性の改善」(68%)が最多でした。前回1位だった「AI・自動化の活用」は43%で3位に後退しています。AIが特別な取り組みではなく、当たり前の道具になったことの表れとレポートは整理しています。
LLMの業務別活用は、前回調査から大きく伸びました。
| 用途 | 前回 | 今回 |
|---|---|---|
| 広告コピー作成 | 42% | 59% |
| キーワードリサーチ | 27% | 39% |
| 会議の要約 | 9% | 35% |
| スクリプト作成・編集 | 23% | 34% |
| オーディエンスリサーチ | 19% | 33% |
一方で、予算管理など「誤りが検出しにくく影響の大きい」業務での活用は10%前後にとどまります。伸びているのは言語中心・低リスクなタスクに偏っている、というのがレポートの読みです。
AI活用の現在地
- AIによる時間削減は週1〜5時間の回答が中心で、20時間以上の削減はほぼ皆無でした
- 22%がAIでノーコード・ローコードのツールを自作しています(いわゆるバイブコーディング。2年前にはほぼ存在しなかった行動です)
- AIエージェントを積極利用・テスト中なのは**21%**にとどまり、30%は導入予定なしと回答しています
- 生成AI検索の台頭には約8割が懸念を示しました
- AIによる失職への強い懸念は少数派です。レポートには「AIはあなたを置き換えない。ただし、あなたよりAIをうまく使う誰かが置き換えるかもしれない」という寄稿が掲載されています
運用実務の意外な実態
ツール活用の実態は、想像より地に足がついたものでした。
- 62%は有料のPPC管理ツールを使っていません(媒体の純正機能のみで運用)
- プロジェクト管理の最多はGoogle Sheets/Excelで44%。レポーティングもSheets/ExcelとLooker Studioが2大勢力です
- Google広告のスクリプト利用は、アカウントあたり平均3.8本から5.4本に増加しました
- P-MAXは利用率が最も高い一方、満足度ではターゲット指定ありの入札戦略やスタンダードショッピングを下回る場面があり、ブラックボックス性への不満は2年間変わっていません
代理店ビジネスの変化
- 時間課金モデルが「将来も持続可能」と答えた割合は46%から39%に低下しました。AIで同じ成果を少ない時間で出せるほど、時間売りは自らの収益を削る構造になるためです
- インハウスチームの「完全内製を維持する」意向は44%から73%に急増しています
- 代理店を雇う広告主側では「今後1〜2年でAIに代理店業務を置き換える」が20%と、「別の代理店への乗り換え」(12%)を上回りました
日本の運用者への示唆
日本のサンプルがほぼない調査ですが、構造的な論点は共通します。
- 「難しくなった」の中身は計測とブラックボックス化。媒体設定より計測基盤の整備が効く状況は日本も同じです
- LLM活用はコピーやリサーチなど言語タスクから。レポート自動化まで進めば世界的にも先行組です
- 世界の6割が有料ツールなし・Sheets運用という実態は、ツール導入より運用フローの設計が先という判断を裏づけます
- 時間課金の限界論は、日本の代理店の料金体系やインハウス支援のあり方にもそのまま接続する論点です
原文はppcsurvey.comからダウンロードできます。