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【事例】BtoB企業のリード獲得広告設計|MQL定義の見直しで商談率を改善した話

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背景:リードは取れるが、商談につながらない

ある人事管理SaaSを提供するBtoB企業の事例です。月間の広告費は約100万円。Google広告とMeta広告を併用し、ホワイトペーパーのダウンロードをコンバージョンポイントに設定していました。

月に80〜100件のリードは安定して獲得できていました。CPA(獲得単価)は1万円前後で、一見すると悪くない数値です。しかし、インサイドセールスが架電してみると、商談に進むのはわずか4〜5件。商談率は5%程度にとどまっていました。

広告経由のリードに対する営業チームの信頼は低く、「広告のリードは質が悪い」という声が上がっていました。

課題分析:MQL定義が緩すぎた

まず、何がMQL(Marketing Qualified Lead)なのかを確認しました。当時のMQL定義は「ホワイトペーパーをダウンロードした人」。それだけです。

ダウンロードしたホワイトペーパーの種類、企業規模、役職、業種は一切考慮されていませんでした。結果として、以下のようなリードもMQLとしてインサイドセールスに渡されていました。

  • 従業員5名の個人事業主(ターゲットは100名以上の企業)
  • 競合他社のリサーチ担当
  • 学生や個人の情報収集目的

営業リソースが限られる中で、これらのリードに架電していたのです。商談率が低いのは当然の結果でした。

BtoBリード獲得ファネル(改善前の実数イメージ)広告クリック 5,000件/月LP訪問 3,500件資料DL(CV) 100件MQL 100件(=資料DL全件)商談 5件(商談率 5%)受注 1件ここが問題全件MQL扱い

ファネルの「資料DL→MQL」の段階にフィルターが存在しないことが、ボトルネックでした。

施策1:MQL定義の再設計

最初に取り組んだのは、MQLの定義そのものの見直しです。営業チームと議論し、「商談化しやすいリードの特徴」を洗い出しました。

過去1年間の受注データを分析した結果、商談化・受注に至ったリードには明確な共通点がありました。

属性商談化しやすい条件スコア
従業員規模100名以上+30点
業種IT・製造・サービス業+20点
役職部長以上 or 人事責任者+30点
行動料金ページ閲覧あり+20点

合計60点以上をMQL、80点以上をホットリードと定義しました。

フォームの入力項目も見直しました。従来は氏名・メールアドレス・会社名の3項目だけでしたが、従業員規模と役職を追加。項目を増やすとCV数は減るリスクがありますが、ここではリード品質を優先する判断をしました。

運用メモ フォームの項目追加でCVRが下がることを懸念するケースは多いですが、BtoB広告では「CVRの低下 < 商談率の改善」のほうが全体のROIに与える影響が大きいことがほとんどです。項目追加前後でCVR・商談率・受注単価の3指標をセットで追跡することをおすすめします。

施策2:CV地点の多層化

次に、コンバージョン地点を1つから3段階に分けました。

CV地点内容CV値(重み)想定月間件数
ホワイトペーパーDL課題認識段階の情報提供160〜80件
デモ申込製品への具体的な関心1010〜15件
問い合わせ導入検討段階303〜5件

従来はホワイトペーパーDLだけを最適化対象にしていたため、自動入札は「とにかくダウンロードしてくれる人」に向けて最適化されていました。CV地点を多層化し、それぞれにCV値を設定することで、自動入札が「問い合わせやデモ申込をしてくれそうな人」を優先的に探すようになります。

Google広告では「コンバージョン値の最大化」入札に切り替え、Meta広告ではカスタムコンバージョンとして3段階を設定しました。

施策3:オフラインCVインポートによる入札最適化

ここまでの施策でリード品質は改善しましたが、もう一段階踏み込みました。CRM上の「商談化」「受注」をオフラインコンバージョンとして広告プラットフォームにインポートする仕組みを構築しました。

仕組みはシンプルです。

  1. フォーム送信時にGCLID(Google)やfbclid(Meta)をCRMに記録する
  2. CRM上でステータスが「商談化」「受注」に変わったタイミングで、GCLIDやfbclidと紐づけてコンバージョンデータを広告プラットフォームに送信する
  3. 自動入札が「商談化・受注に至ったクリック」の特徴を学習する

Google広告ではオフラインコンバージョンインポート、Meta広告ではコンバージョンAPIを使って実装しました。

MQL定義の見直し:Before / AfterBefore(旧定義)MQL判定基準:資料DLした人 = 全員MQLフォーム項目:氏名 / メール / 会社名(3項目)CV地点:ホワイトペーパーDLのみ商談率 5% / 月間MQL 100件After(新定義)MQL判定基準:スコアリング60点以上(規模+業種+役職+行動で判定)フォーム項目:氏名/メール/会社名/規模/役職CV地点:資料DL / デモ申込 / 問い合わせ商談率 15% / 月間MQL 40件MQL件数は60%減、しかし商談件数は5件→6件に微増。受注単価は大幅改善。

オフラインCVインポートの効果が表れるまでには2〜3か月かかりました。自動入札が「商談化しやすいユーザー」の特徴を学習するには、一定量のコンバージョンデータが必要だからです。

結果:商談率3倍、受注単価は40%改善

3つの施策を段階的に実施し、約4か月後に数値が安定しました。

指標BeforeAfter変化
月間リード数100件65件-35%
MQL件数100件40件-60%
商談件数5件6件+20%
商談率(MQL→商談)5%15%3倍
受注件数1件1.5件(平均)+50%
リード獲得CPA1万円1.5万円+50%
受注CPA100万円60万円-40%

リード数とMQL件数は大幅に減りました。CPA(リード獲得単価)も上がっています。しかし、受注CPAで見ると100万円から60万円へと40%改善しています。

広告費は変えていません。同じ広告費で、より多くの受注を獲得できるようになったのです。

営業チームからは「広告のリードの質が上がった」という声が出るようになりました。架電時の反応が明らかに変わり、「興味がない」「間違えて入力した」という反応が減ったとのことです。

施策ごとの効果の内訳

3つの施策はそれぞれ異なるタイミングで効果が出ました。

施策効果が出た時期主な寄与
MQL定義の再設計1か月目〜無駄な架電の削減。営業効率が即座に改善
CV地点の多層化2か月目〜自動入札の学習精度が向上。デモ申込の増加
オフラインCVインポート3〜4か月目〜受注に近いユーザーへの配信最適化

最も即効性があったのはMQL定義の見直しです。広告の設定を変えなくても、「誰をMQLと見なすか」を変えるだけで営業効率は改善します。

一方、中長期的に最も大きなインパクトがあったのはオフラインCVインポートでした。自動入札が「広告クリック→商談→受注」の全体を学習することで、リード品質そのものが底上げされました。

実務で気をつけたポイント

CVR低下への社内説明

フォーム項目を増やした直後、CVRが約30%低下しました。月間のリード数が100件から70件程度に落ちたため、社内から「広告の効果が下がったのでは」という懸念が出ました。

ここで重要だったのは、事前に「リード数は減るが商談率は上がる見込み」と関係者に共有していたことです。KPIをリード数から商談数に切り替える合意を得てから施策に着手したことで、数値の一時的な悪化に対して冷静に対処できました。

スコアリングの閾値調整

スコアリングの閾値は最初から完璧に設定できるものではありません。最初は60点をMQLとしましたが、運用しながら2回調整しました。

閾値を高くしすぎるとMQL件数が極端に減り、営業チームの稼働が余ります。低すぎると従来と変わりません。月次で「商談率」「営業のキャパシティ稼働率」の両方を確認しながら微調整するのが実務的なやり方です。

運用メモ オフラインCVインポートの運用で最も多いトラブルは、GCLIDやfbclidの欠損です。フォームの隠しフィールドにパラメータが正しく引き渡されているか、CRMに確実に保存されているかを、導入直後に必ず検証してください。パラメータの欠損率が20%を超えると、自動入札の学習精度が大幅に低下します。

この事例から得られる学び

リード数よりリード品質を追う

BtoB広告においては、リード数やCPAだけを見ていると本質的な改善にたどり着けません。月間100件のリードから5件の商談を得るよりも、40件のリードから6件の商談を得るほうが、営業リソースの観点でも広告費の観点でも効率的です。

広告とCRMをつなげる

オンラインの広告データとオフラインの営業データが分断されている限り、自動入札は「フォーム送信しやすい人」に最適化され続けます。広告プラットフォームに「どのクリックが商談・受注につながったか」を教えることで、最適化の精度は大きく変わります。

施策は段階的に

MQL定義の見直し、CV地点の多層化、オフラインCVインポートの3つを同時に実施すると、どの施策がどれだけ効いたか分からなくなります。1つずつ順番に導入し、効果を確認しながら次の施策に進むのがおすすめです。

BtoBのリード獲得広告は、広告設定だけでは完結しません。MQLの定義、CV設計、CRM連携まで含めた全体設計が成果を左右します。「リード数は取れているのに商談につながらない」という課題を抱えている場合は、まずMQLの定義を見直すところから始めてみてください。

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