背景と課題
あるアパレルEC事業者が、リマーケティング広告の効率低下に直面していました。主な課題は以下の3点です。
- リマーケティング広告のCV率が前年比で30%低下
- サイト訪問者全体に同一の広告を配信しており、メッセージの関連性が低い
- Cookie制限の影響でリマーケティングリストの規模が縮小
当初は「全訪問者」を1つのリマーケティングリストとして運用していました。商品詳細ページの閲覧者もトップページのみの閲覧者も同じ広告を見るため、ユーザーの検討段階に合ったメッセージを届けられていない状態でした。
改善施策
施策1:行動ベースのリスト分割
「全訪問者」の1リストを、行動深度に基づいて4つに分割しました。
| リスト | 条件 | 推定意欲 |
|---|---|---|
| 閲覧のみ | トップ/一覧ページのみ閲覧 | 低い |
| 商品詳細閲覧 | 商品詳細ページを閲覧 | 中程度 |
| カート追加 | カートに商品を追加 | 高い |
| カート放棄 | カート追加後に離脱 | 非常に高い |
施策2:クリエイティブの最適化
各リストに対して、検討段階に合ったクリエイティブを制作しました。
- 閲覧のみ:ブランドの世界観を伝えるイメージ広告(認知目的)
- 商品詳細閲覧:閲覧した商品と類似商品のダイナミック広告
- カート追加:「お気に入りの商品をお忘れではないですか」という直接的な訴求
- カート放棄:カート内の商品画像 + 期間限定の送料無料オファー
施策3:拡張コンバージョンの導入
Cookie制限によるリマーケティングリストの縮小に対応するため、Google広告の拡張コンバージョンを導入しました。購入完了時にメールアドレスをハッシュ化して送信することで、Cookieが失効した後もコンバージョンを正確に計測できるようになりました。
施策4:Meta広告のCAPI導入
Meta広告ではコンバージョンAPI(CAPI)を導入し、サーバーサイドからのCV計測を追加しました。ブラウザベースのピクセルと併用することで、計測精度の向上とリマーケティングリストの拡充を実現しました。
結果
施策実施から3か月後の結果です(前年同期比)。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| リマーケティング全体のCV率 | 1.2% | 2.1% | +75% |
| カート放棄リストのCV率 | 2.8% | 5.4% | +93% |
| CPA | 3,200円 | 2,100円 | -34% |
| 拡張CV導入後の計測CV数 | 基準 | +18% | 計測精度向上 |
成功要因の分析
行動データに基づくセグメント
「訪問者全体」ではなく、GA4のイベントデータに基づいて行動深度でセグメントを切ったことが最大の成功要因です。ユーザーの検討段階に合ったメッセージを届けることで、広告の関連性が大幅に向上しました。
計測基盤の強化
拡張コンバージョンとCAPIの導入により、Cookie制限下でも計測精度を維持できました。これにより自動入札の学習データが正確になり、入札最適化の精度も向上しています。
運用メモ この事例のポイントは「リスト分割 × クリエイティブ最適化 × 計測基盤強化」の3施策を同時に実施した点です。リスト分割だけではクリエイティブが追いつかず、計測だけでは配信の改善にはつながりません。3つの施策を組み合わせることで、リマーケティング全体のパフォーマンスが引き上がりました。
運用メモ カート放棄のリマーケティングは、離脱からの経過時間によってCV率が大きく変わります。この事例では、離脱後1時間以内、1-24時間、1-7日の3段階でリストを分け、それぞれ異なるクリエイティブと入札で配信しました。離脱直後のリマーケティングが最もCV率が高いため、可能であれば時間帯を細かく区切ることを推奨します。