Google広告のGinny Marvin氏が、動画Q&Aシリーズ「Ads Decoded」でAI Maxに関する質問に回答しました。Brad Geddes氏ら業界専門家とのAMA(参加者が自由に質問できるQ&A形式)で挙がった疑問を扱っています。
この記事では、その回答を公式情報とあわせて整理します。DSA(動的検索広告)からAI Maxへの移行を控えた運用者にとって、実務的な判断材料になる内容です。
前提:AI Maxとは
AI Maxは、既存の検索キャンペーンに追加できるAI機能のセットです。新しいキャンペーンタイプではなく、トグルで有効化するオプションレイヤーという位置づけです。主に次の3つの機能で構成されます。
| 機能 | 内容 | 適用単位 |
|---|---|---|
| 検索語句マッチング | キーワード未登録の関連クエリを発見して配信 | 広告グループ |
| テキストカスタマイズ | 検索語句やLPに合わせて見出し・説明文を自動生成 | キャンペーン |
| 最終ページURL拡張 | ドメイン内で成果が見込めるURLへ誘導 | キャンペーン |
AI Maxは2026年4月15日にグローバルで一般提供(GA)に達しました。日本を含む全世界の広告主が利用できます。

今回のいちばんの要点:DSA自動移行は2027年2月へ
まず押さえるべきは、DSAからAI Maxへの自動移行の期限が延期された点です。Ginny Marvin氏は、繁忙期であるQ4を避けるため、自動移行の期限を2027年2月に後ろ倒しすると説明しました。運用者からの「移行にもっと時間が必要」という声を受けた対応です。
ただし「後回しにしてよい」という意味ではありません。同氏は、手動アップグレードツールがほぼ展開済みだと述べています。これを使い、移行を自分の管理下で進めることを強く推奨しています。
ツールの場所は、DSAのキャンペーン設定内、「その他の設定」の中にあります。自動移行を待つより、先に手動で移行を済ませておくほうが、細かい制御を保てます。
Q1. 移行前にキャンペーンを再編すべきか(Brad Geddes氏)
Brad Geddes氏からは、移行前の構造の作り方についての質問がありました。URLターゲティング用に専用キャンペーンを分けるべきか。それとも、キーワードとURLのターゲティングを同じキャンペーンに混在させるべきか。この2点が論点でした。
Ginny Marvin氏の回答は明確でした。移行前に再編せず、現在のキャンペーン構造を維持したままアップグレードツールを使うことを推奨しています。理由は3つ挙げられました。
- インプレース(その場)でのアップグレード:広告グループIDがそのまま維持され、履歴データが引き継がれる。コールドスタート(学習のやり直し)を避けられる
- 未対応の条件は読み取り専用で引き継ぎ:カテゴリやページコンテンツなどの条件は、移行後も機能し続ける。一時停止や削除はできるが、編集はできない
- DSAの広告グループがRSA(レスポンシブ検索広告)へ自動マッピングされる:アップグレードツールがこの変換を担う
再編を検討するなら、移行してパフォーマンスをしばらく観察してからにすべき、というのが結論です。まずは再編よりも移行を優先する。この順序が重要です。
Q2. 最終ページURL拡張で地域がずれる問題
San Joseの配管工を探す検索語句が、NYCの配管工のページに誘導されてしまう。こうした地域ミスマッチの相談もありました。最終ページURL拡張を使い、地域名を含むキーワードで配信している広告グループで起こりやすい問題です。
これに対しては、広告グループ単位の「関心のある地域(location of interest)」設定が用意されています。すでにキーワードに地域名を含めていても、この設定で対処します。
たとえば「New York City plumber」で入札していて最終ページURL拡張がオンなら、広告グループの関心のある地域に「New York City」を追加します。これでキーワードレスのマッチもその地域に沿うようになります。
地域の判定ルールも整理されました。検索語句に地域の言及がある場合は、その地域が優先されます。地域の言及がなく「near me」のように現在地が検出される場合は、検索者の位置情報が使われます。
注意点として、関心のある地域を設定するとマッチ精度は上がりますが、トラフィックは減ります。それでも地域の意図を守るうえで最も有効な方法だと同氏は述べています。
Q3. コンバージョン数の最低ラインはあるか
「AI Max導入前に必要なコンバージョン数について、いろいろな推奨値があるが、閾値はあるのか。tCPAとtROASで違うのか」という質問です。
回答は「ない」でした。スマート自動入札を使っているキャンペーンをAI Maxに移行するための、コンバージョン数の最低閾値は存在しません。AI Maxの有効化そのものが、コンバージョン量の条件に依存しないためです。
ただし注意点があります。AI Maxは拡張型(expansionary)の仕組みです。予算が上限に達している、あるいは予算で制限されている状態では、新しいクエリやコンバージョンを見つける余地がありません。
- 予算で制限された状態を避ける
- 支出のコントロールは、AI Maxなしの通常の検索キャンペーンと同様に、CPA/ROASのターゲットで管理する
- コンバージョン量が不安なら、カスタマージャーニーのより手前のコンバージョンで入札するのも一案(ただし品質のよいシグナルであることが前提)
一問一答:残る3つの論点
動画の最後には、短い質疑が3つ用意されていました。いずれも公式ヘルプだけでは拾いにくい実務的な論点です。
1. 規制業種で免責文言を必ず表示したい
テキストの免責条項(text disclaimers)が用意されています。これはキャンペーン単位のアセットで、レスポンシブ検索広告の最初の説明文に確実に表示されます。最終ページURL拡張がオンでランディングページが動的に切り替わっても、免責文言の表示は保証されます。文字数は説明文と同じ全角45文字(半角90文字)が上限で、広告の充実度スコアには影響しません。2026年6月時点でグローバルに順次展開中で、アカウントで有効になるとアセットの画面から設定できます。
2. P-MAXとAI Maxを両方運用中。新しい会話型クエリのキーワードレスマッチはどちらが勝つか
広告ランク(Ad Rank)で決まります。同じクエリにP-MAXとAI Maxの両方が該当する場合、広告ランクが高いほうが配信されます。P-MAXが常に優先されるわけではありません。両者が同じクエリで競合しやすい構成では、除外キーワードで配信の棲み分けを管理しておくと、意図しない共食いを防げます。
3. 同じ広告グループのブロードマッチと重複してAI Maxがマッチするのはなぜか。冗長では
AI Maxがより良い広告を出せる場合に起こります。ここでの「広告」とは、アセットの組み合わせとランディングページを合わせたものを指します。同じキーワードでも別の広告の組み合わせだったらオークションに負けて表示されなかった、というケースです。重複ではなく、より勝てる広告が選ばれている状態だと理解できます。
日本の広告運用者はどう動くべきか
AI Maxは日本でも利用できます。DSAを運用しているなら、移行はいずれ避けられません。そのうえで、アカウントの状況に応じた優先順位を整理します。
- コンバージョンが十分にあるDSAは、まず手動ツールで先行移行する。広告グループIDと履歴が引き継がれるため、2026年内に移行してQ4前に検証期間を確保するのが安全です
- コンバージョンが少ないアカウントは、先にスマート自動入札の土台を整える。目標CPA/目標ROASの設定と計測精度を固めてから移行するほうが、学習の質が安定します
- 移行時は再編しない。現状の構造のままアップグレードし、成果を見てから調整します
- 地域名キーワードを使う広告グループは、関心のある地域を設定する。最終ページURL拡張による地域ずれを防げます
- 規制業種はテキストの免責条項を用意する。必須表示を担保したうえでAI Maxの最適化を使えます
DSAの移行は、いずれ全アカウントが通る道です。期限が延びた今のうちに、手動ツールで小さく試し、パフォーマンスを見ながら移すのが最も堅実な進め方になります。