この記事でわかること
関心があっても利用できない理由は何か。akippaの地域連携を題材に、情報不足と供給不足を分け、自社に足りない役割と提携相手を考える方法を整理します。
生成AIによる要約
観たい試合があり、チケットも買える。でも、車で行こうとすると駐車場所が決まらない。そんな場面では、観戦への意欲があっても、来場をためらう場合があります。
商品に関心を持ってもらえているのに、購入や利用につながらない。その理由を考えるとき、商品の説明や価格に加え、利用に必要な条件にも目を向けたいところです。
駐車場予約サービスのakippaと地域の取り組みは、その条件を考える題材になります。顧客に何が足りず、自社には何が足りないのか。そこを具体化すると、外部の力を借りる理由も見えてきます。
顧客の目的まで見ると、検討する範囲が広がる
顧客の目的を「チケットを買う」で区切れば、価格や販売画面が主な改善対象になります。「現地で試合を楽しむ」まで広げれば、移動手段や駐車場所も検討に入ります。
FC町田ゼルビアの本拠地は、丘陵地の公園内にあります。クラブの発表によると、周辺には新しい駐車場を造れる土地が少なく、駐車場不足の改善を求める声がありました。
クラブとakippaは、地域の企業や住民が持つ駐車スペースの開拓を進めました。2024年1月には、周辺で500台分以上を確保したと発表しています。FC町田ゼルビアの発表
これは、利用に必要な場所を用意した取り組みです。ただし、駐車場の確保で観客が何人増えたかは、今回確認した資料では分かりません。
この事例から考えたいのは、顧客が目的を達成するまでの、どこを見ているかです。チケットの確保に加え、移動手段を決め、現地に到着するまでにも、利用に必要な条件があります。
たとえば家具でも、商品が気に入った後に、搬入や設置の問題が残る場合があります。顧客の目的を「家具を買う」から「自宅で使う」まで広げると、商品ページの外にも確認すべき条件が見つかります。
「分からない」と「用意できない」では、対応が変わる
利用をためらう理由が見つかったら、何が不足しているのかを分けて考える必要があります。
家具が搬入できるか分からない場合は、寸法の案内や事前確認が役立つかもしれません。一方、確認した結果、搬入できないのであれば、説明を増やしても解決しません。別の商品や搬入方法を検討する必要があります。
駐車場も同様です。空いている場所を見つけにくい問題と、必要な日時に空きがない問題では、対応が異なります。
実務で整理するなら、次のように分けられます。

図1:利用を妨げる理由と対応の候補。施策を考えるための整理で、複数の理由が重なる場合もあります。筆者作成。
ここを分けずに「購入への不安を減らす」とまとめると、実際には供給が足りない問題まで、伝え方で解決しようとしてしまいます。
まず、顧客が判断できないのか、判断しても利用できないのかを確かめる。その違いが、改善する対象を決める手がかりになります。
自社に足りないものから、協力相手を考える
必要な条件が分かっても、自社だけで整えられるとは限りません。
町田の担当者インタビューでは、面識のない貸主への営業で、仕組みを理解してもらう難しさが語られています。その後、地域の知人を通じて意向を聞き、好感触を得た相手を代理店につなぐ方法が採られました。クラブ担当者への取材
ここには、地域との接点を持つ人と、具体的な営業を進める人の役割分担があります。紹介後の成約率が高かったという説明も、事前に好感触を得た案件の話です。紹介そのものの効果を切り出した数字ではありません。
この取り組みを自社に置き換えるなら、先に考えるのは「誰と提携するか」より、自社に何が不足しているかです。
必要なのは、設備や人員かもしれません。特定の相手に話を聞いてもらえる関係や、地域の事情に詳しい人が必要な場合もあります。不足するものが具体的になれば、協力相手に求める役割も明確になります。
自社の案内を直せば済む問題もあれば、専門業務として委託できるものもあるでしょう。継続して相互に役割を担う必要があるなら、提携が選択肢に入ります。
相手の知名度や顧客数に加え、その相手と組むことで、顧客が利用できる条件をどう整えられるかを考えます。
協力する側にも、参加する理由が必要になる
役割が明確でも、相手が協力するとは限りません。提供する側にも、負担や別の選択肢があります。
2023年の諏訪湖祭湖上花火大会では、地域の保険代理店が駐車場の開拓を担いました。同社への取材では、本業の認知や地域貢献にも意義を見いだしていたことが語られています。
一方、手数料を理由に参加せず、自社で当日の駐車場運営をした企業もあったそうです。地域パートナーへの取材
この対比からは、協力相手が何と比較して判断しているかを考えられます。貸主にとっては、予約サービスへの参加に加え、自社で運営する方法もありました。
したがって、参加を提案する際には、収入の機会だけでなく、手数料や運用負担まで含めた説明が必要になります。どちらが有利かは、相手の状況によって変わります。
地域のパートナーについても、本業の認知につながるという期待と、実際の契約増は別です。今回の取材記事から、本業への増分利益までは判断できません。
顧客にとって便利であることに加え、協力する側が何を得て、何を担うのかを具体化する。その条件が合わなければ、役割や進め方を見直す必要があります。
登録数の先で、最初の問題が減ったかを確かめる
提携先や提供できる場所が増えても、顧客が利用できたかは別に確認する必要があります。
町田で発表された500台以上は、駐車スペースを確保した成果です。発表時点では、開拓した駐車場の認知向上と稼働率の引き上げが、今後の目標とされていました。FC町田ゼルビアの発表
駐車場が掲載されても、必要な日に予約できなければ利用にはつながりません。空きがあっても、距離や車両サイズの条件が合わない場合もあります。
そのため、貸主の参加、希望条件での予約、当日の利用を分けて見る必要があります。どの段階で止まっているかによって、追加で整える条件が変わるためです。
他の施策でも、最初に見つけた問題へ戻って評価できます。搬入確認の支援なら、相談件数に加え、可否を判断できたか、その後の配送まで完了したかを確認する。対応に要した時間や負担も、継続の判断材料になります。
なお、今回の事例はクラブの発表や当事者取材に基づいています。取り組みの内容と、売上や採算への効果は分けて捉える必要があります。
繰り返し現れる「利用できない理由」から始める
最初から大きな提携を考える必要はありません。問い合わせや失注理由を振り返り、繰り返し現れる問題を探すことから始められます。
記録だけでは理由が分からない場合は、顧客への確認も必要です。一件の声を、そのまま多くの顧客に共通する問題と決めつけないようにします。

図2:課題の確認から協力相手の検討、検証までの流れ。記事の考え方を整理した図で、akippaの社内手順を示すものではありません。筆者作成。
そのうえで、対象を絞って次の順序で検討します。
- 情報が足りないのか、利用に必要な条件が足りないのかを確かめる。
- 自社で対応できる範囲と、外部の力が必要な部分を分ける。
- 小さく対応を試し、利用の完了と提供側の負担を確認する。
商品の魅力を伝える施策と並行して、その商品を使える条件にも目を向ける。顧客が最後に何を確かめようとしていたのか、何がそろわなかったのか。その記録から、次に整えるべきものが見えてきます。
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ryottaman
広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。
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