経営者と話がかみ合わない運用者へ|『経営メモ』で経営の判断軸をのぞく

この記事でわかること

CPAやROASの報告はできても、クライアントの経営者と同じ目線で話すのは難しい。広告代理店アナグラムの創業者・阿部圭司さんが16年の経営を184のメモにまとめた『経営メモ』の読みどころを、公開されている項目と著者の発信から整理します。

生成AIによる要約

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広告の数字は毎月きちんと報告している。それでも、クライアントの経営者との打ち合わせになると、話がかみ合わない。こちらはCPAの話をしているのに、相手は資金繰りや採用の話をしている。運用者なら、そんな場面に覚えがあるかもしれません。

広告の成果は、経営の判断の一部でしかありません。経営者が何を考えて広告費を出しているのかを知らないと、提案はいつまでも「広告の中」の話にとどまります。

この記事は、読者の課題から選ぶ本の紹介です。出版社の紹介、公開されている項目、著者本人のnoteをもとに、運用者の視点で読みどころを整理します。今回取り上げるのは、阿部圭司さんの『経営メモ 16年の起業家人生で得た知見』(WORDS、2026年)です。

どんな本か

著者は、外部資本を入れずに3つの会社を創業し、いずれも株式の譲渡まで導いた経営者です。そのうちの1社が、運用型広告の代理店であるアナグラム株式会社です。

本は、著者が16年間スマホのメモに書きためてきた経営の知見をまとめたものです。著者のnoteによれば、収録は全184項目です(出版社の紹介では約200項目)。出版社は、経営学者が整理した理論ではなく、現場で転び、迷い、失敗するたびに拾い集めたメモだと紹介しています。

著者は発売日のnoteで、きれいに整理された成功論ではなく「もっと泥くさくて、もっと実務的で、もっと生々しい本」を目指したと書いています。想定する読者として挙げているのは、これから会社をつくる人、経営者、チームを持つ管理職、商売に向き合う人、自分の働き方を考えたい人です。

テーマは、お金、マネジメント、マーケティング、採用、経営、M&Aの6つです。日経の記事によれば、このうち「経営」が105項目と半分以上を占めます。

公開されている項目から見えること

出版社のページ、日経の記事、著者のnoteで、いくつかの項目名が紹介されています。ここでは15項目を、お金と経営の判断に関わるものと、人との向き合い方に関わるものに分けて並べます。

お金と経営の判断

  • 資本政策は後戻りできない。だからこそ慎重に
  • 銀行から借りれるだけ借りて、信用を買う
  • 節税なんかで時間を浪費しない
  • 経費削減ではなく、売上を伸ばすことを先に考える
  • 間違っていたとしても、決めるのがリーダーの仕事
  • 時間軸という概念を持つ

人との向き合い方

  • 他者理解を深めよう
  • 配慮はしても遠慮はするな
  • メンバーの話は聞くが、意見は聞かない
  • 自分でボールを止めない
  • 口約束はしない
  • 仕事は断ってもいい
  • 採用だけは妥協してはいけない
  • 人事は配置
  • 怒るというROIが極めて悪い行為

どれも1行で言い切る形です。本の性格をよく表しているのが、著者がnoteに書いた「経営も、マーケティングも、結局は他者理解の競技です」という一文です。数字や手法より先に、相手をどう理解するかが置かれています。

運用者はどう読むか

ここからは筆者の読み替えです。本が広告運用者に向けて書かれているわけではありません。

経営者の優先順位を知る

「経費削減ではなく、売上を伸ばすことを先に考える」という項目は、広告費の議論に直結します。広告費を削る提案と、広告費を使って売上を伸ばす提案では、経営者の受け取り方が違う可能性があります。

「銀行から借りれるだけ借りて、信用を買う」「節税なんかで時間を浪費しない」も同じです。経営者の頭の中では、広告費は資金繰りや投資の判断と地続きにあります。その前提を知っておくと、CPAの報告の先に何を話すべきかが見えやすくなります。

クライアントとの向き合い方に置き換える

「他者理解を深めよう」「自分でボールを止めない」「口約束はしない」は、経営者どうしや社内の話として書かれた項目だと思われます。ただ、筆者の読み替えでは、クライアントとの関係にもそのまま当てはまります。

相手の事業が今どの段階にあり、何に困っているのかを理解する。質問や依頼を手元で寝かせない。できるか分からないことをその場で約束しない。どれも、運用の腕とは別のところで信頼を左右する振る舞いです。

「時間軸という概念を持つ」も、広告の評価に通じます。今月のCPAだけを見るのか、半年後の売上まで見るのかで、同じ数字の意味は変わります。

「決める」ことの重さを知る

「間違っていたとしても、決めるのがリーダーの仕事」という項目もあります。

運用者は、判断材料をそろえるのが仕事です。ただ、材料を積み上げても、最後に決めるのは経営者です。筆者の考えでは、提案の最後に「どちらを選ぶべきか」を自分の言葉で示すことが、決める人の負担を減らします。

自分がリーダーになったときに

マネジメントや採用の項目は、運用チームを率いる立場になった人にも関わります。「採用だけは妥協してはいけない」「人事は配置」「怒るというROIが極めて悪い行為」は、どれも組織を動かす側の視点です。

プレイヤーからマネージャーに移るとき、運用の腕だけでは解決できない悩みが増えます。その入口としても読める本だと考えます。

読むときの注意

ここで紹介した項目は、184項目のうち公開されている一部です。項目の中身の解説までは、公開情報では確認できていません。広告運用者に向けた記述がどれくらいあるかは、公開情報からは確認できませんでした。

また、融資や税務、資本政策に関わる項目は、著者自身の経験にもとづく考え方です。実際の判断は、税理士などの専門家に相談してください。

こんな運用者に向いている

  • クライアントの経営者と、広告の数字の先にある話をしたい
  • 広告費の提案を、経営の判断として説明できるようになりたい
  • 運用チームのマネジメントを任され始めた

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ryottaman

ryottaman

広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。

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