SNS・動画広告の用語を体系的に整理する
SNS広告と動画広告には、検索広告とは異なる独自の指標や概念が数多くあります。Meta広告のThruPlay、TikTok広告の6秒Focused View、YouTube広告のCPVなど、媒体ごとに定義が微妙に異なる用語も少なくありません。
この記事では、SNS・動画広告で使われる40以上の用語を4つのカテゴリに分けて整理します。各用語の定義だけでなく、媒体間の違いにも触れていきます。
まず、SNS広告・動画広告における課金モデルの全体像を確認しましょう。媒体やキャンペーン目的によって採用される課金方式が異なります。
ここからは、各カテゴリごとに用語を解説していきます。
配信・ターゲティングの用語
広告をだれに、どのように届けるかに関わる用語です。SNS広告では、ユーザーの属性や行動データを活用した精度の高いターゲティングが可能です。
インプレッション(Impression)
広告が画面上に表示された回数です。1人のユーザーに3回表示されれば、インプレッションは3です。全媒体共通の基本指標で、配信規模を把握する際に使います。
リーチ(Reach)
広告が表示されたユニークユーザー数です。インプレッションが表示「回数」なのに対し、リーチは表示された「人数」を指します。Meta広告では推定値として算出されます。
フリークエンシー(Frequency)
1人のユーザーに対する平均表示回数です。「インプレッション / リーチ」で計算します。フリークエンシーが高すぎるとユーザーに飽きられ、クリック率の低下や広告疲れにつながります。
カスタムオーディエンス(Custom Audience)
自社が保有する顧客データ(メールアドレスやサイト訪問履歴など)をもとに作成するターゲティングリストです。Meta広告やTikTok広告で利用でき、既存顧客への再アプローチや除外設定に活用します。
類似オーディエンス(Lookalike Audience)
カスタムオーディエンスに似た特徴を持つ新規ユーザーを、媒体のアルゴリズムが自動で見つけてターゲティングする機能です。Meta広告ではソースの上位1%〜10%の範囲を指定できます。詳しくは類似オーディエンスの設計ガイドで解説しています。
リターゲティング(Retargeting)
自社サイトやアプリを訪問・利用したことのあるユーザーに対して、再度広告を配信する手法です。Meta広告やTikTok広告で一般的に使われる呼称で、Google広告では「リマーケティング」と呼ばれます。
コアオーディエンス(Core Audience)
Meta広告で、年齢・性別・地域・興味関心・行動などの条件を組み合わせて作成するターゲティングです。カスタムオーディエンスや類似オーディエンスとは異なり、自社データを必要としません。
ブロード配信(Broad Targeting)
ターゲティング条件をほぼ設定せず、媒体のアルゴリズムに配信先の選定を任せる手法です。Meta広告ではAdvantage+ショッピングキャンペーンでこの手法が標準化されています。
オーディエンスネットワーク(Audience Network)
Meta広告において、FacebookやInstagram以外の提携アプリやサイトにも広告を配信する仕組みです。配信面を拡大してリーチを増やす効果がありますが、配信品質にばらつきが出ることもあります。
配信面(プレースメント / Placement)
広告が表示される具体的な場所のことです。Metaの場合はFacebookフィード、Instagramストーリーズ、リールなどが該当します。TikTokではForYouフィード、Pangleなどがあります。
運用メモ Meta広告のAdvantage+配信面(旧:自動配置)を使うと、媒体のアルゴリズムが最もパフォーマンスの良い配信面に自動で予算を振り分けます。手動で配信面を限定するよりも効率が良いケースが多いため、特段の理由がなければ自動配置が推奨されます。
動画指標の用語
動画広告特有の視聴に関する指標です。媒体によって「視聴」の定義が異なるため、比較する際は基準を揃える必要があります。
次の図は、動画広告が表示されてからコンバージョンに至るまでの指標の流れを示しています。
動画再生数(Video Play)
動画広告が再生された回数です。ただし「再生」の定義は媒体ごとに異なります。Meta広告では動画が画面に表示され再生が始まった時点でカウントされますが、YouTube広告ではユーザーの意図的な操作に基づいてカウントされます。
3秒再生数(3-Second Video Play)
動画が3秒以上再生された回数です。Meta広告とTikTok広告で使われる指標で、ユーザーが最低限の関心を示したかどうかの目安になります。
ThruPlay
Meta広告独自の動画視聴指標です。動画が15秒以上再生されたか、15秒未満の動画では最後まで再生された場合にカウントされます。動画キャンペーンの課金基準としても使われます。
動画視聴率(Video View Rate / VVR)
動画広告の再生数をインプレッション数で割った割合です。「動画再生数 / インプレッション x 100」で計算します。YouTube広告では「視聴率」としてレポートに表示されます。
再生完了率(Video Completion Rate / VCR)
動画が最後まで再生された割合です。「完全視聴数 / 再生開始数 x 100」で算出します。動画の構成力やストーリーの訴求力を測る指標として重要です。
25%・50%・75%再生率
動画の再生がそれぞれ25%、50%、75%まで到達した割合です。どの段階で離脱が多いかを分析し、クリエイティブの改善ポイントを特定する際に使います。
CPV(Cost Per View)
動画1再生あたりの広告費です。YouTube広告のスキップ可能インストリーム広告では、ユーザーが30秒以上視聴するか、動画に対して操作(クリックなど)を行った場合に課金が発生します。
Focused View
TikTok広告における動画視聴の課金方式です。ユーザーが広告を6秒以上視聴した場合、またはスキップ前に広告をクリックした場合に課金されます。
フックレート(Hook Rate)
動画広告の冒頭でユーザーの注意を引けた割合を示す指標です。「3秒再生数 / インプレッション x 100」で計算します。SNS広告のフィード上では最初の数秒が重要なため、クリエイティブ評価によく使われます。
ホールドレート(Hold Rate)
動画を3秒以上視聴したユーザーのうち、最後まで視聴を続けた割合です。「完全視聴数 / 3秒再生数 x 100」で計算します。フックレートとセットで見ることで、冒頭と中盤以降のクリエイティブ品質を分けて評価できます。
運用メモ フックレートが低い場合は冒頭のインパクト不足、ホールドレートが低い場合は中盤以降の構成に問題がある可能性があります。動画のどのパートを改善すべきかを判断する際に、この2つの指標をセットで確認するのが効果的です。
クリエイティブの用語
広告の表示形式やフォーマットに関する用語です。各媒体で使える広告フォーマットの種類を理解しておくと、目的に合った配信設計がしやすくなります。
カルーセル広告(Carousel Ad)
複数の画像や動画を横スワイプで表示する広告フォーマットです。Meta広告やTikTok広告で利用可能です。商品を複数並べてカタログのように見せたり、ストーリー仕立てで訴求したりする際に適しています。
コレクション広告(Collection Ad)
メイン画像(または動画)の下に商品カタログを表示するMeta広告の広告フォーマットです。タップするとインスタントエクスペリエンスが全画面で開き、広告内でそのまま商品を閲覧できます。ECサイトとの相性が良い形式です。
インスタントエクスペリエンス(Instant Experience)
Meta広告で使えるモバイル専用のフルスクリーン表示機能です。旧名称はキャンバス広告です。広告をタップすると全画面が開き、画像・動画・テキスト・CTAボタンを組み合わせたリッチなランディングページのように表示されます。
リール広告(Reels Ad)
InstagramリールやFacebookリールの閲覧中に表示される、縦型フルスクリーンの動画広告です。最大90秒の動画で、オーガニック投稿と同じフォーマットで表示されるため、自然な接触が期待できます。
ストーリーズ広告(Stories Ad)
InstagramストーリーズやFacebookストーリーズに表示される縦型フルスクリーン広告です。15秒以内の動画または静止画が一般的です。24時間で消えるオーガニックストーリーズの合間に挿入されます。
インフィード広告(In-Feed Ad)
SNSのフィード(タイムライン)上に、通常の投稿と同じ形式で表示される広告です。TikTokのForYouフィード、Facebookニュースフィード、Instagramフィードなどで使われます。
インストリーム広告(In-Stream Ad)
YouTube動画の再生前(プレロール)、再生中(ミッドロール)、再生後(ポストロール)に挿入される広告です。スキップ可能型、スキップ不可型、6秒以下のバンパー広告の3種類があります。
バンパー広告(Bumper Ad)
YouTube広告の6秒以下のスキップ不可動画広告です。tCPM課金で、短い時間で強いメッセージを伝える認知目的のフォーマットです。
Spark Ads
TikTok広告独自のフォーマットで、オーガニック投稿をそのまま広告として配信できる仕組みです。いいねやコメント、シェアなどのエンゲージメントがオーガニック投稿に蓄積される点が通常のインフィード広告と異なります。
ダイナミック広告(Dynamic Ad)
商品カタログ(データフィード)と連携し、ユーザーの閲覧履歴や行動に応じて表示する商品を自動で切り替える広告です。Meta広告のAdvantage+カタログ広告やTikTok広告の商品カタログ広告が該当します。
リード広告(Lead Ad)
Meta広告やTikTok広告で利用できる、広告内でフォーム入力を完結させるフォーマットです。ランディングページへの遷移が不要なため、フォーム離脱率を下げる効果があります。
UGC(User Generated Content)
ユーザーが作成したコンテンツのことです。SNS広告では、インフルエンサーや一般ユーザーが撮影した素材を広告クリエイティブとして活用するケースが増えています。制作コストを抑えながら、フィード上で自然に見える広告を作れるのが強みです。
アスペクト比(Aspect Ratio)
動画や画像の縦横の比率です。SNS広告では配信面ごとに推奨アスペクト比が異なります。フィード広告は1:1(正方形)、ストーリーズやリールは9:16(縦型フルスクリーン)、YouTubeインストリームは16:9(横型)が基本です。
セーフゾーン(Safe Zone)
広告の表示時にUI要素(プロフィール名、CTAボタンなど)が重なる領域を避けるためのガイドラインです。特にストーリーズ広告やリール広告では上下左右に余白を設けないと、重要な情報がボタンに隠れることがあります。
最適化の用語
広告配信の効率やパフォーマンスを高めるための仕組みに関する用語です。SNS広告では機械学習を活用した自動最適化の比重が年々高まっています。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)
Meta広告のEC向け自動最適化キャンペーンです。ターゲティング、配信面、クリエイティブの組み合わせをアルゴリズムが自動で最適化します。従来のキャンペーン構成よりも設定項目が少なく、機械学習に委ねる設計思想です。
学習フェーズ(Learning Phase)
Meta広告やTikTok広告で、広告セットが新規作成または大幅編集された後に入る最適化の初期段階です。Meta広告では約50件のコンバージョンが蓄積されるまでこのフェーズが続きます。学習フェーズ中はパフォーマンスが不安定になりやすいため、設定変更は控えるのが基本です。
学習フェーズの制限(Learning Limited)
Meta広告で、十分なコンバージョンデータが得られず学習フェーズを完了できない状態を指します。広告費が少なすぎる、ターゲティングが狭すぎる、コンバージョンイベントが発生しにくいなどが原因です。
oCPM(Optimized CPM)
Meta広告の最適化された課金方式です。課金自体はインプレッションベース(CPM)ですが、コンバージョンする可能性が高いユーザーに優先的に広告を配信するよう、入札額が自動調整されます。
tCPM(Target CPM)
YouTube広告で使われる目標CPMの入札戦略です。1,000回あたりの平均広告費が設定した目標値になるよう自動で調整されます。バンパー広告やスキップ不可インストリーム広告で使用します。
コンバージョンAPI(Conversions API / CAPI)
サーバーサイドからコンバージョンデータを広告プラットフォームに送信する仕組みです。Meta広告のコンバージョンAPIが代表的で、Cookieに依存しない計測を実現します。ブラウザのトラッキング制限が強化される中、データの欠損を補う重要な手段です。詳しくはMeta広告コンバージョンAPIの導入ガイドで解説しています。
ピクセル(Pixel)
Webサイトに設置するトラッキング用のコードです。Meta Pixel、TikTok Pixelなど、各媒体が提供しています。サイト訪問者の行動を計測し、コンバージョン計測、リターゲティング、最適化のデータ基盤として機能します。
イベント(Event)
ピクセルやコンバージョンAPIを通じて計測される、ユーザーの特定のアクションのことです。ページ閲覧(PageView)、カート追加(AddToCart)、購入(Purchase)などがあります。媒体間で標準イベントの名称は似ていますが、完全に同一ではないため注意が必要です。
アトリビューションウィンドウ(Attribution Window)
広告のクリックや表示からコンバージョンまでの計測期間です。Meta広告のデフォルトは「クリック後7日間、ビュー後1日間」です。TikTok広告ではクリック後7日間・28日間などを選択できます。設定によって計測されるコンバージョン数が変わるため、レポート比較の際は設定を揃えることが大切です。
自動入札(Automatic Bidding)
広告プラットフォームのアルゴリズムに入札額の決定を委ねる方式です。Meta広告では「最小単価」「最小ROAS」などの戦略があり、TikTok広告にも同様の仕組みがあります。
入札上限(Bid Cap)
1アクション(クリックやコンバージョン)あたりの入札上限額を手動で設定する方式です。広告費の高騰を防ぎたい場合に使いますが、上限を厳しく設定すると配信量が極端に減る場合があります。
広告ランク(Ad Relevance / Quality Ranking)
広告の品質や関連性をスコアで示す指標です。Meta広告では「品質ランキング」「エンゲージメント率ランキング」「コンバージョン率ランキング」の3軸で評価されます。ランクが低いとCPMが上昇しやすくなります。
CBO(Campaign Budget Optimization)
Meta広告のキャンペーン予算最適化です。キャンペーンレベルで予算を設定し、成果の良い広告セットへ自動で予算を配分する仕組みです。TikTok広告にも同様の「キャンペーン予算最適化」機能があります。
クリエイティブの自動最適化
複数のクリエイティブ素材(見出し、画像、動画、テキスト)を組み合わせて、最も成果の良い組み合わせを自動で見つける機能です。Meta広告の「ダイナミッククリエイティブ」や「フレキシブル広告」がこの仕組みに該当します。
広告疲れ(Ad Fatigue)
同じ広告を同じユーザーに繰り返し表示することで、クリック率やコンバージョン率が低下する現象です。フリークエンシーの上昇、CTRの低下、CPAの悪化が同時に起きている場合は、クリエイティブの差し替えを検討します。
データフィード(Product Catalog / Data Feed)
商品情報(名称、価格、画像URL、在庫状況など)を構造化したデータファイルです。ダイナミック広告やショッピング広告の配信に必須で、CSVやXMLなどの形式で媒体にアップロードまたは連携します。
ビュースルーコンバージョン(View-Through Conversion / VTC)
広告を見た(クリックはしなかった)ユーザーが、一定期間内にコンバージョンに至った場合にカウントされる指標です。動画広告やディスプレイ広告など、直接クリックされにくいフォーマットの間接的な効果を測る際に参照します。
エンゲージメント(Engagement)
広告に対するユーザーの反応の総称です。いいね、コメント、シェア、保存、クリックなどが含まれます。媒体によって「エンゲージメント」に含まれるアクションの範囲が異なるため、レポーティングの際は定義を確認しておくことが重要です。
まとめ
SNS広告・動画広告の用語は、媒体固有のものと共通のものが入り混じっているため、最初は戸惑いやすいかもしれません。この記事で取り上げた用語を4つのカテゴリで整理しておくと、媒体をまたいだレポーティングや施策の比較がしやすくなります。
各媒体の詳細な設定や活用方法については、以下の関連記事もあわせてご確認ください。