薬機法が広告運用に関係する理由
薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品や化粧品などの品質と安全性を守るための法律です。広告についても第66条から第68条で明確な規制が設けられています。
運用型広告に携わる方にとって、薬機法は「直接関係ない法律」と思われがちです。しかし、化粧品や健康食品、サプリメントなどの広告を扱う場合、薬機法の規制を知らないまま運用すると、広告の不承認だけでなく、法的リスクにもつながります。
特に重要なのは、薬機法第66条の「虚偽・誇大広告の禁止」と第68条の「未承認医薬品等の広告禁止」です。これらは広告主だけでなく、広告の制作や掲載に関わるすべての関係者に適用されます。
運用メモ 薬機法違反の広告は、2021年の法改正で課徴金制度の対象になりました。売上の4.5%が課徴金として科される可能性があるため、「知らなかった」では済まないリスクがあります。広告運用者も規制の基本を押さえておくことが重要です。
商品カテゴリ別の規制レベル
薬機法の規制は、商品のカテゴリによって大きく異なります。まず全体像を把握しましょう。
健康食品は薬機法の直接的な規制対象ではありませんが、医薬品的な効能効果を標榜すると「未承認医薬品の広告」とみなされ、薬機法第68条に違反します。この点を見落とすケースが非常に多いため、注意が必要です。
化粧品の広告表現ルール
56の効能効果の範囲
化粧品の広告で標榜できる効能効果は、厚生労働省の通知により56項目に限定されています。この範囲を超える表現は、医薬品的な効能効果とみなされます。
使用前後の写真に関する規制
化粧品の広告でよく見かける「ビフォーアフター」写真ですが、使用には厳しい制限があります。
メイクアップ効果(ファンデーション、口紅など)による色彩の変化を示す写真は認められます。一方で、スキンケア製品による肌質の変化を示す使用前後の写真は、効能効果の保証につながるため原則として認められません。
広告審査でも、使用前後の写真はリジェクトされやすい要素のひとつです。「個人の感想です」の注記があっても、写真自体が効能効果を保証する内容であれば違反になります。
健康食品の広告表現ルール
医薬品的効能効果の標榜禁止
健康食品(サプリメントを含む)は、法律上は「食品」に分類されます。食品に対して医薬品的な効能効果を標榜することは、未承認医薬品の広告として薬機法第68条に違反します。
「血圧を下げる」「糖尿病を予防する」「免疫力を高める」といった表現は、すべて医薬品的な効能効果に該当します。「がんに効く」「アレルギーを治す」なども当然NGです。
機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)は、届出・許可された範囲で機能性を表示できますが、それでも「治る」「治療」といった医薬品的な表現は使えません。
体験談の取り扱い
健康食品の広告で多用される「個人の体験談」にも注意が必要です。
東京都福祉局の指導によると、体験談であっても、その内容が医薬品的な効能効果を標榜するものであれば違反になります。「このサプリを飲んだら膝の痛みがなくなった」という体験談は、たとえ実際の体験であっても、医薬品的効能効果の標榜とみなされます。
運用メモ 健康食品の広告では「栄養補給」「健康維持」「美容のサポート」など、食品として妥当な範囲の表現に留めることが基本です。「○○に効く」「○○が改善」といった表現が広告文やLPに含まれていないか、入稿前に必ず確認しましょう。Google広告やMeta広告でも、これらの表現は媒体ポリシーでリジェクトされることが多いです。
医薬品・医薬部外品の広告規制
承認範囲内の表現に限定される
医薬品と医薬部外品は、厚生労働省から承認を受けた効能効果のみを広告で表現できます。承認された範囲を超える効能効果を表示すると、薬機法第66条(虚偽・誇大広告の禁止)に違反します。
たとえば、風邪薬として承認された医薬品に対して「インフルエンザに効く」と表現することは、承認範囲外の効能効果の標榜にあたります。また、承認された効能効果であっても、「絶対に効く」「必ず治る」といった保証的な表現は認められません。
医薬部外品(薬用化粧品)の注意点
薬用化粧品(医薬部外品に分類される化粧品)は、承認された有効成分による効能効果を標榜できます。たとえば、薬用美白化粧品であれば「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」という表現が可能です。
ただし、化粧品の56の効能効果と医薬部外品の承認された効能効果を混同してはいけません。「シミを消す」「シワをなくす」といった表現は、医薬部外品であっても使えません。あくまで「防ぐ」「抑える」の範囲に留まります。
広告審査でリジェクトされやすい表現
実務では、薬機法の規制に加えて、Google広告やMeta広告など各媒体の広告ポリシーも考慮する必要があります。以下は、審査でリジェクトされやすい典型的な表現パターンです。
パターン1:治療・治癒を暗示する表現
「○○を治す」「○○が改善される」「○○を解消」といった表現は、化粧品や健康食品では使えません。代わりに「○○を防ぐ」「○○をケアする」「○○をサポートする」と表現します。
パターン2:身体の構造・機能に影響する表現
「脂肪を燃焼させる」「代謝を上げる」「細胞を活性化する」など、身体の構造や機能に直接影響を与えるような表現は、医薬品的な効能効果とみなされます。
パターン3:最大級・保証的な表現
「No.1の効果」「最も効く」「100%実感」といった表現は、薬機法だけでなく景品表示法の観点からも問題になります。
パターン4:不安を煽る表現
「このままだと○○になりますよ」「放置すると危険」といった表現は、医薬品等適正広告基準でも不適切とされています。ユーザーの不安を過度に煽って購買を促す手法は、媒体ポリシーでも規制対象です。
パターン5:医療関係者の推薦
「医師が推薦」「○○大学が開発」といった表現は、医薬品等適正広告基準で制限されています。医薬品・医薬部外品・化粧品においては、医療関係者等が推薦している旨の広告は原則として行わないこととされています。
実務チェックリスト
広告文やLP、クリエイティブを入稿する前に、以下のチェックリストで確認しましょう。
共通チェック項目
- 「治る」「治す」「改善する」「解消する」など、治療・治癒を暗示する表現はないか
- 「必ず」「絶対」「100%」など、効果を保証する表現はないか
- 「No.1」「最高」「最強」など、最大級表現に根拠はあるか
- 使用前後の写真で、効能効果を保証していないか
- 体験談の内容が、医薬品的な効能効果の標榜になっていないか
- 不安を過度に煽る表現はないか
- 医療関係者の推薦表現を不適切に使っていないか
化粧品の追加チェック項目
- 標榜している効能効果が56項目の範囲内か
- 「浸透」は「角質層まで」の注釈がついているか
- 「美白」は医薬部外品の承認を受けた製品に限っているか
- 「エイジングケア」は「年齢に応じたケア」の意味で使われているか
健康食品の追加チェック項目
- 医薬品的な効能効果(病気の治療・予防)を標榜していないか
- 身体の構造・機能に影響する表現をしていないか
- 機能性表示食品の場合、届出された表現の範囲内か
- 「サプリ」を「薬」と誤認させるような表現はないか
医薬品・医薬部外品の追加チェック項目
- 承認された効能効果の範囲内の表現か
- 効能効果の保証的な表現をしていないか
- 用法・用量について誤解を招く表現はないか
- 医療関係者の推薦広告に該当していないか
運用メモ 薬機法関連の広告表現に迷ったら、厚生労働省の医薬品等広告規制ページや東京都福祉局の解説ページを確認しましょう。最終的な判断が難しい場合は、薬事法務に詳しい弁護士や薬剤師に相談することを推奨します。
まとめ
薬機法の広告規制は、商品カテゴリによって「言えること」と「言えないこと」が明確に分かれています。化粧品なら56の効能効果の範囲内、健康食品なら医薬品的な表現を避けること、医薬品・医薬部外品なら承認範囲内の表現に留めることが基本原則です。
広告運用の実務では、法律上の規制に加えて、各広告媒体のポリシーも合わせて確認する必要があります。「法律では問題なくても媒体ポリシーで不承認になる」ケースや、その逆のケースもあるため、両面からのチェックが欠かせません。
なお、本記事は薬機法の広告規制の概要を整理したものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。薬機法の判断は専門家(薬事法務の弁護士・薬剤師)にご相談ください。
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