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生成AIにコピーを100本頼む前に、考えておきたいこと

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生成AIで広告コピーを100本出してください、と言えば、ものの数分で100本が出てくる時代になりました。

ほんの数年前まで、コピーライターがうんうん唸りながら一晩かけてやっていたことを、AIはランチの間に片づけてしまう。これはまぎれもなくすごいことで、僕自身もその恩恵を日常的に受けている一人です。

ただ、最近ちょっと気になっていることがあります。

「AIでコピーを量産できるようになった」ことと、「いい広告コピーが増えた」ことの間には、思ったほどの因果関係がないのではないか、と。

「散らかす→選ぶ→磨く」という3ステップ

コピーライターの谷山雅計さんは著書の中で、コピーを書くプロセスを「散らかす→選ぶ→磨く」の3ステップで説明しています。まずたくさんの切り口を書き散らかす。そこから受け手にとって本当に意味のあるものを選び出す。そして選んだものを磨き上げる。

谷山さんが特に強調しているのが、散らかしが足りなければ選ぶ能力は身につかない、という点です。少ない選択肢の中から無理やり選んだものを磨いても、磨く力も育たない。散らかすことが起点にあるからこそ、選ぶ力も磨く力も鍛えられるのだ、という話なんですよね。

散らかす生成AIが担うフェーズ選ぶ受け手に届くものを見抜く磨く選んだ案を磨き上げる

AIが担うのは「散らかす」まで

この視点で見ると、生成AIがやってくれているのは「散らかす」のフェーズです。しかも、人間の何十倍もの速度と量で散らかしてくれる。これは本当にありがたい。

問題は、その次なんです。

大量のコピー案が目の前に並んだとき、そこから「受け手にとって本当に意味のあるものはどれか」を見極める力。これは散らかすフェーズをAIに任せたからといって、勝手に身につくものではありません。むしろ、散らかすプロセスを自分の手でやらなくなった分だけ、選ぶ力が鍛えられる機会は減っているのかもしれない。

それに、生成AIの出力は学習データの延長線上にあります。既存の広告表現のパターンを組み合わせて生成される以上、どうしても「見たことのある表現」の範囲に収まりやすい。谷山さんの言葉を借りれば、「そりゃそうだ」の領域にはたどり着けても、「そういえばそうだね」と受け手の意識の下に眠っていたものを掘り起こすには、やはり人間の目が要る。だからこそ選ぶ力がますます重要になるわけですが、ここで「オンライン広告なんだから、全部テストすればいいじゃないか」という反論が聞こえてきそうです。

「全部テストすればいい」への反論

山のようなコピー案をそのまま広告に突っ込んで、CTRなりCVRなりで勝者を決めればいい。人間が選ぶ必要なんてない、と。

正直に言えば、僕もこの考え方に一理あると思っています。オンライン広告の最大の強みはテストができることですし、データで語れることは極力データで語るべきだというのは、僕たちの仕事の基本でもあります。

でも、少し立ち止まって考えてみたいのです。

たしかに媒体側の自動最適化が働くので、筋の悪いコピーは早い段階で配信が絞られます。100本が均等にインプレッションを食い続けるわけではない。それでも、学習期間の初動では比較的均等に近い配分が行われるのが実態です。そのフェーズで品質のばらつきが大きいクリエイティブ群を投入すると、アカウント全体の品質評価に影響を及ぼしかねません。テスト期間中に消費されるのはお金だけではなく、見込み顧客への第一印象でもある。その第一印象を、選別されていないコピーの束に委ねるリスクは小さくないと思うのです。

もうひとつ、全量テストで「勝った」コピーが本当に最良だったのか、という問いもあります。テストで評価されるのは基本的にクリック率やコンバージョン率といった短期的な指標です。けれど広告コピーの役割はそれだけではないはずで、ブランドのトーンに合っているか、中長期的にブランド資産として機能するか。そうした判断は数値だけでは下せません。そこには人間の「選ぶ力」がどうしても必要になる。

さらに言えば、テストの母集団がすべてAI生成であるなら、勝ち残るのは「AI的な最適解」です。それは既知のパターンの中での最適解であって、テストの母集団そのものを設計し直すべきかどうかの判断は、テストの外側にいる人間にしかできません。

磨く力を鍛えるために

だからこそ、AIが散らかしてくれた候補の中から本当に受け手に届くものを見抜く目を持つこと。あるいは、候補の中にはないけれど「こっちの方向にもっと面白いものがあるはずだ」と気づいて、AIにもう一度散らかし直してもらう対話力を持つこと。そういう力が、これからの広告運用者やマーケターにとってますます大事になっていくのではないでしょうか。

量産の力は手に入りました。それは間違いなく大きな武器です。でも、武器は使い手次第で、刀を振り回すだけでは剣術にはならないんですよね。

散らかす力をAIに預けた分、僕たちは選ぶ力と磨く力にもっと意識的になる必要がある。AIが100本散らかしてくれた後に、101本目を自分の手で書いてみる。案外そこに、選ぶ目を鍛える一番の近道があるのかもしれません。

参考:広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉(谷山雅計著/宣伝会議)

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