この記事でわかること
キャンペーン全体のROASが好調でも、商品単位で見ると損益分岐を下回る商品に広告費が偏っていることがあります。Google広告の「商品」レポートを使った監査の手順を、損益分岐ROASによる判定基準、レポートの合計が一致しない理由、見つかった商品への打ち手まで含めて解説します。
生成AIによる要約
ショッピング広告やP-MAXのレポートを、キャンペーン単位だけで見ていないでしょうか。キャンペーン全体のROASが好調でも、その内側では一部の商品が広告費の多くを使い、損益分岐を下回っていることがあります。
本記事では、Google広告の「商品」レポートを使って、商品単位で監査する手順を解説します。監査の問い、判定の基準、管理画面での手順、見つかった商品への打ち手の順に整理します。アカウント全体の監査の進め方は広告アカウント監査の進め方で扱っています。本記事はその中の「商品」の部分を掘り下げるものです。
なぜ商品単位で見るのか|平均値は偏りを隠す
キャンペーンのROASは、配信したすべての商品の平均です。ただし単純な平均ではなく、広告費で重み付けされた平均です。少額で高いROASを出す商品があると、大半の広告費が低いROASの商品に流れていても、全体の数字は良く見えます。
具体的な数字で確かめます。次の例は、説明のために作った架空のキャンペーンです。
| 広告費 | 売上 | ROAS | |
|---|---|---|---|
| 商品グループA | 20万円 | 300万円 | 1,500% |
| 商品グループB | 80万円 | 200万円 | 250% |
| キャンペーン全体 | 100万円 | 500万円 | 500% |
キャンペーン全体のROASは500%です。ところが広告費の8割は、ROAS 250%の商品グループBに使われています。粗利率が30%の場合、損益分岐ROASは約333%です。全体では黒字に見えても、商品グループBは広告費を粗利で回収できていません。
この偏りは、キャンペーン単位のレポートでは見えません。商品単位で見て初めて分かります。
商品単位の監査が後回しになりやすい理由
検索広告の監査では、キーワードや検索語句を見るのが定番です。一方で商品単位の確認は、監査の項目から漏れやすい傾向があります。理由は主に3つです。
1つ目は、キャンペーンのROASが目標を満たしていると、深く見る動機が生まれにくいことです。2つ目は、商品のデータが「商品」という別のページにあり、合計がキャンペーンと一致しないことです。3つ目は、P-MAXの商品単位の指標が、以前は一部のネットワークに限られていたことです。
3つ目については状況が変わりました。2026年6月以降、P-MAXの商品単位の指標は全ネットワークが対象です。動画、アプリ、デマンド ジェネレーションの各キャンペーンも含まれます。経緯はP-MAXの商品レポートが全ネットワークに拡張で解説しています。
監査で答える7つの問い
商品単位の監査は、次の問いに答える形で進めると漏れが出にくくなります。前半の5つはPPC News Feedの記事が挙げるチェックリストを基にしています。後半の2つは、Google広告ヘルプの商品レポートの説明に沿った確認です。
| # | 問い | 見る指標 |
|---|---|---|
| 1 | 広告費は一部の商品に集中していないか | 費用の多い順に並べたときの上位商品のシェア |
| 2 | 損益分岐を下回る商品はどれか | ROAS(コンバージョン値 / 費用)と損益分岐ROAS |
| 3 | データが十分なのに平均を下回る商品はどれか | クリック数とROAS |
| 4 | フィードにあるのに配信されていない商品はどれだけあるか | 費用・クリックがゼロの商品数 |
| 5 | 予算に見合う成果を出しているカテゴリ・ブランドはどれか | カテゴリ・ブランド単位のROAS |
| 6 | 同じ商品が複数のキャンペーンで配信されていないか | 商品アイテム IDとキャンペーンの組み合わせ |
| 7 | 好調な商品が配信できない状態になっていないか | ステータス列と問題列 |
判定の基準を先に決める
問いに答えるには、何をもって「悪い」とするかの基準が要ります。監査を始める前に、次の3つを決めておきます。
赤字の線は損益分岐ROASで引く
「ROASが100%を下回ったら赤字」という基準を見かけることがあります。しかしROAS 100%は、売上と広告費が同額という意味です。商品の原価を払えば、実際には大きな赤字になっています。
赤字かどうかの線は、粗利率から求める損益分岐ROASで引きます。計算式は「1 ÷ 粗利率」です。粗利率30%なら約333%、粗利率50%なら200%になります。商品ごとに粗利率が大きく違う場合は、カテゴリごとに損益分岐ROASを分けて設定します。考え方の詳細はROI・ROAS分析ガイドで解説しています。
判定に必要なデータ量を決める
クリックが少ないうちは、1件のコンバージョンの有無でROASが大きく振れます。たとえば10クリックでコンバージョンが0件の商品を、それだけで「売れない商品」とは判断できません。
PPC News Feedの記事では、目安として「3 ÷ アカウントのコンバージョン率」のクリック数を挙げています。コンバージョン率が1.5%なら200クリックです。平均的な商品なら、約3件のコンバージョンが出る量にあたります。これは同記事の筆者の経験則で、Googleの基準ではありません。自社の商品単価や購入頻度に合わせて調整してください。
比較の基準を固定する
「平均を下回る商品」を探すとき、比べる平均は期間を変えるたびに動きます。監査では期間を固定し、その期間のアカウント平均ROASを基準値として記録しておきます。翌月の監査で同じ基準と比べられるようにするためです。
管理画面での手順
ここからは、Google広告の管理画面で監査を進める手順です。表記は日本語版のGoogle広告ヘルプに合わせています。
1. 「商品」レポートを開く
「キャンペーン」メニューから「商品」に移動します。特定のキャンペーンだけを見る場合は、[キャンペーン]フィルタでキャンペーンを選びます。
2. 列を追加する
表示項目から、次の列を追加します。
| 列 | 監査での使いみち |
|---|---|
| 費用 | 広告費の集中度を見る |
| コンバージョン数 | 判定に必要なデータ量を確かめる |
| コンバージョン値 | 売上への貢献を見る |
| コンバージョン値 / 費用 | ROASとして損益分岐と比べる |
| 商品のクリック数 | 判定に必要なデータ量を確かめる |
| 表示回数 | 配信されているかどうかを見る |
「商品のクリック数」は、ユーザーが特定の商品を直接クリックした回数です。以前は「クリック数」という列名でした。広告見出しや「サイトを見る」ボタンなどのクリックは、「商品以外のクリック数」として別の列で数えます。商品単位の判定には、商品のクリック数を使います。
3. 並べ替えとフィルタで問いに答える
列がそろったら、問いごとに並べ替えます。
- 問い1(集中度):費用の多い順に並べ、上位の商品が広告費全体の何割を占めるかを計算します
- 問い2(損益分岐割れ):判定に必要なクリック数に達した商品のうち、コンバージョン値 / 費用が損益分岐ROASを下回るものに絞ります
- 問い3(平均割れ):同じくクリック数の条件を満たし、ROASがアカウント平均を下回る商品に絞ります
- 問い5(カテゴリ・ブランド):ブランド、カテゴリ、商品タイプ、カスタムラベルの単位でまとめて見ます
- 問い7(ステータス):ヘルプ「商品レポートについて」は[ステータス]列を定期的に確認するよう勧めています。好調な商品が「無効」になっていたら、[問題]列で原因を確かめます
4. 複数キャンペーンでの重複を確認する
問い6は、レポート エディタの事前定義レポートで確認します。経路は次のとおりです。
- セクション メニューの「分析情報とレポート」を開く
- 「レポート エディタ」をクリックする
- 「事前定義レポート(旧[詳細分析])」カードの「すべて表示」をクリックする
- 「ショッピング」から「商品アイテム ID」を選ぶ
表にキャンペーンの列を加え、商品アイテム IDで並べ替えます。同じIDが複数のキャンペーンに並んでいれば、その商品は重複して配信されています。
5. 配信されていない商品を数える
問い4は、管理画面だけでは答えにくい問いです。フィードにある全商品と、配信の実績を突き合わせる必要があるためです。商品レポートをダウンロードし、Merchant Centerにある商品の総数と照らし合わせます。差の分が、フィードにあっても配信されていない商品です。
レポートの合計がキャンペーンと一致しない理由
商品レポートの数字を合計すると、キャンペーンの数字と合いません。Google広告ヘルプは、これを想定どおりの動作だと説明しています。理由は指標によって逆向きです。
| 指標 | キャンペーン合計との関係 | 理由 |
|---|---|---|
| 費用、コンバージョン数 | 少なくなることがある | Merchant Centerの商品を掲載した広告に由来する分だけを計上するため |
| 表示回数、エンゲージメント数など | 多くなることがある | 広告内の商品ごとに数えるため(5商品を含む広告が1回表示されると5回) |
監査では、商品レポートの中だけで比較を完結させるのが基本です。商品の費用を、キャンペーンの費用で割ってシェアを出すような計算は避けます。分母と分子で数え方が違うためです。
見つかった商品への打ち手
監査の結果は、広告費と損益分岐ROASの2軸で整理すると、打ち手を決めやすくなります。以下は筆者の実務での整理です。
広告費が多いのにROASが損益分岐を下回る商品は、最優先で見直します。まず、商品自体に原因がないかを確かめます。価格が競合より高くないか、商品ページで購入をためらう要素がないか、といった点です。そのうえで、カスタムラベルで別のキャンペーンやアセットグループに分け、目標ROASを変える方法があります。
広告費が少なくROASも下回る商品は、データ量で扱いを変えます。判定に必要なクリック数に達していなければ、判断を保留します。達していて改善の見込みが薄い商品は、配信の対象から外す候補になります。
広告費は少ないがROASが上回る商品は、伸ばす余地を探ります。カスタムラベルで分けて予算を寄せ、ROASを保ったまま配信量が増えるかを試します。
配信されていない商品は、まずフィードを確認します。タイトルに検索される語が入っているか、画像や価格に問題がないかを見ます。カスタムラベルの設計やタイトルの改善はMerchant Centerフィード最適化ガイドで詳しく扱っています。
監査の頻度と、変更後の確認
商品単位の監査は、月1回を目安に定例の業務へ組み込むのが現実的です。PPC News Feedの記事の筆者も、月1回の頻度で実施しているとしています。
キャンペーンの分割、カスタムラベルの追加、商品の移動など、構造を変えたあとは別に確認します。変更後の短い期間と、変更前の同じ長さの期間を比べ、狙いどおりに広告費が動いたかを見ます。P-MAXは学習に時間がかかるため、変更直後の数日だけで結論を出さないよう注意します。
商品数が多いアカウントでは、ダウンロードしたデータを表計算ソフトで加工する手間が大きくなります。毎月同じ基準で見るなら、判定の基準と並べ替えの手順をテンプレートにしておくと、担当者が変わっても同じ監査を再現できます。商品単位の分析に特化した外部ツールもあります。ただし配信の可否やMerchant Centerの問題は、公式の画面で確認するのが確実です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | キャンペーン全体のROASに隠れた、商品単位の偏りを見つける |
| 使うレポート | 「キャンペーン」メニューの「商品」、レポート エディタの事前定義レポート(商品アイテム ID) |
| 赤字の線 | 損益分岐ROAS(1 ÷ 粗利率)。ROAS 100%ではない |
| 判定の前提 | 一定のクリック数に達してから判断する |
| 合計の扱い | キャンペーンの合計とは一致しない。商品レポートの中で比較する |
| 打ち手 | 広告費と損益分岐ROASの2軸で4つに分け、それぞれ対応を決める |
| 頻度 | 月1回を目安に、構造の変更後は前後比較 |
まず試すべき1アクション
「商品」レポートで直近30日を表示し、費用の多い順に並べてください。上位10商品のコンバージョン値 / 費用を、自社の損益分岐ROASと比べます。広告費が多いのに損益分岐を下回る商品が1つでもあれば、それが最初に手を入れる対象です。
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参照元
ryottaman
広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。
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