デマンドジェネレーションキャンペーンの設計ガイド|GDN統合で拡大する配信面と活用法
デマンドジェネレーションキャンペーンとは
デマンドジェネレーション(Demand Gen)は、旧ファインド(Discovery)キャンペーンの後継として2023年に登場したキャンペーンタイプです。YouTube、Discover、Gmailに加え、2025年からはGoogleディスプレイネットワーク(GDN)とGoogleマップにも配信面が拡大しています。
検索広告が「すでにニーズを持つユーザー」へのアプローチであるのに対し、デマンドジェネレーションは「まだニーズが顕在化していないユーザー」に対して需要を喚起する役割を担います。SNS広告に近い立ち位置のキャンペーンです。
2025年にはGDN(従来のディスプレイキャンペーン)がデマンドジェネレーションに統合されることが発表されました。スタンドアロンのディスプレイキャンペーンは段階的に廃止され、2027年中に完全移行が予定されています。この統合により、デマンドジェネレーションはGoogleの検索以外の主要な配信面をほぼすべてカバーするキャンペーンタイプへと進化しています。
配信面の特徴と使い分け
デマンドジェネレーションの配信面は7つに拡大しています。それぞれユーザーの閲覧状態が異なるため、配信面に適したクリエイティブを用意することが成果に直結します。
| 配信面 | フォーマット | ユーザーの状態 | 適したアプローチ |
|---|---|---|---|
| YouTube Shorts | 縦型動画(9:16) | 短尺動画を次々に視聴 | 冒頭2秒で注意を引く。テンポ重視 |
| YouTube インフィード | 画像 or 動画 | 次に観る動画を探している | サムネイルの訴求力が重要 |
| YouTube インストリーム | 横型動画(16:9) | 動画コンテンツに集中 | ストーリー型の訴求が有効 |
| Discover | 画像中心 | ニュースや記事をブラウジング | 記事風の自然なビジュアル |
| Gmail | 画像+テキスト | メールをチェック中 | メール件名的な訴求で開封を促す |
| GDN(ディスプレイ) | 画像中心 | Webサイト・アプリを閲覧中 | 300万以上のサイト・アプリに配信 |
| Google Maps | 画像+テキスト | 店舗・場所を探している | プロモートピンで来店を促す |
YouTube Shortsは特に注目すべき配信面です。日本国内でのShortsの月間視聴者は増加傾向にあり、若年層だけでなく幅広い年代にリーチできます。
Discoverは、Googleアプリのホーム画面やChromeの新しいタブに表示されるフィードです。ユーザーの検索・閲覧履歴に基づいて表示されるため、興味関心との親和性が高い配信面です。
GDNは2025年4月から画像アセットの配信が開始されました。Googleの社内データでは、GDN配信を追加するとコンバージョン数が平均16%増加したと報告されています。
チャネルコントロール
2025年3月に導入されたチャネルコントロールにより、配信先チャネルの個別選択が可能になりました。従来はすべての配信面に一括で配信されていましたが、目的に応じて配信面を絞り込めるようになっています。
選択可能なチャネルは以下のとおりです。
- YouTube(インストリーム・インフィード・Shortsを個別選択可)
- Discover
- Gmail
- Google Maps
- Googleディスプレイネットワーク(GDN)
- すべてのGoogleチャネル(自動拡張)
例えば「YouTube Shortsのみに配信したい」といった設定も可能です。また、GDNのみを選択すれば、従来のディスプレイキャンペーンと同等の配信を、デマンドジェネレーションの最適化エンジンで実行できます。
チャネルコントロールはキャンペーン作成時または編集時に設定します。配信データを見ながら、パフォーマンスの良いチャネルに集中するといった運用も可能です。
GDNからの移行
スタンドアロンのディスプレイキャンペーン(GDN)は、2027年中にデマンドジェネレーションへ完全統合される予定です。移行のスケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年3月 | チャネルコントロール導入。配信面の個別選択が可能に |
| 2025年4月 | デマンドジェネレーションでGDNへの画像配信が開始 |
| 2026年6月〜 | 移行ツールのロールアウト開始。既存GDNキャンペーンの手動移行が可能に |
| 2026年後半 | 新規GDNキャンペーンの作成が不可に |
| 2027年中 | 残存キャンペーンが自動移行。統合完了 |
移行時には過去42日分のパフォーマンス履歴が引き継がれ、再学習期間は約1〜2日です。移行ツールが利用可能になった段階で、早めに手動移行しておくことを推奨します。
GDNのみの配信を維持したい場合は、チャネルコントロールでGDN以外をオフにすれば問題ありません。
P-MAXとの違いと使い分け
デマンドジェネレーションとP-MAXは、どちらもGoogleの自動化キャンペーンですが、制御範囲と運用方針に明確な違いがあります。GDN統合後は配信面の重複が増えたため、使い分けのポイントを改めて整理します。
| 比較項目 | デマンドジェネレーション | P-MAX |
|---|---|---|
| 配信面 | YouTube、Discover、Gmail、GDN、Maps | 検索、ディスプレイ、YouTube、Discover、Gmail、マップ |
| 検索面への配信 | なし | あり |
| チャネルコントロール | あり(配信面を個別選択可) | なし(全チャネル一括) |
| 類似セグメント | 利用可能 | 利用不可 |
| クリエイティブ制御 | 配信面別にプレビュー可能 | 自動組み合わせ中心 |
| 入札戦略 | コンバージョン数の最大化、目標CPA、目標ROAS、クリック数の最大化 | コンバージョン数の最大化、目標CPA、目標ROAS |
| 商品フィード | 対応 | 対応 |
| 用途 | 配信面を制御しながら需要を喚起 | 全チャネル横断の自動最適化 |
P-MAXは検索面を含むGoogleのほぼすべての広告枠に横断的に配信します。一方で、チャネル単位のオプトアウトはできません。
デマンドジェネレーションは検索面への配信がない代わりに、チャネルコントロールで配信面を細かく制御できます。類似セグメントを活用した精度の高いオーディエンス設計が可能で、クリエイティブの見え方も事前に確認できます。
実際の運用では、P-MAXとデマンドジェネレーションの併用も有効です。P-MAXで検索を含む広範囲をカバーしつつ、デマンドジェネレーションでビジュアル面の訴求を強化する構成が多く見られます。
クリエイティブ設計のポイント
デマンドジェネレーションでは、画像アセットと動画アセットを組み合わせて登録します。配信面に応じた仕様を押さえておくことが重要です。
画像アセットの仕様
| アスペクト比 | 推奨サイズ | 主な配信先 | 登録数 |
|---|---|---|---|
| 横長 1.91:1 | 1200 x 628 | Discover、Gmail | 必須 |
| スクエア 1:1 | 1200 x 1200 | Discover、Gmail | 必須 |
| 縦長 4:5 | 960 x 1200 | Discover(モバイル) | 任意(推奨) |
画像は全アスペクト比合計で最大20枚です。横長とスクエアは必須です。縦長は任意ですが、Discoverのモバイル表示で画面占有率が高くなるため、用意することを推奨します。
動画アセットの仕様
| アスペクト比 | 推奨用途 | 推奨の長さ |
|---|---|---|
| 縦型 9:16 | YouTube Shorts | 15〜60秒 |
| 横型 16:9 | YouTube インストリーム | 15秒〜 |
| スクエア 1:1 | YouTube インフィード | 15〜60秒 |
YouTube Shorts向けの縦型動画は、冒頭の2秒で注意を引くことが特に重要です。無音再生にも対応できるよう、テキストオーバーレイや字幕を入れることも検討してください。
アセットグループ設計の考え方
アセットグループは、商品カテゴリやターゲット層ごとに分けるのが基本です。アセットグループごとに異なるオーディエンスとクリエイティブを紐付けられるため、訴求の一貫性を保てます。
例えば、ECの場合は「カテゴリA向け」「カテゴリB向け」のように商品軸で分け、BtoBの場合は「認知向け」「リード獲得向け」のようにファネル段階で分ける方法が考えられます。
商品フィードを連携すると、動的な商品画像を広告に表示できます。小売やECでは積極的に活用しましょう。
オーディエンス設計
デマンドジェネレーションの強みの一つが、オーディエンス設計の柔軟性です。特に類似セグメント(Lookalike)は、このキャンペーンタイプならではの機能です。
利用可能なオーディエンスタイプ
| オーディエンスタイプ | 概要 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 類似セグメント | 既存顧客リストに類似したユーザー | 新規ユーザーの効率的な獲得 |
| カスタムセグメント | 検索キーワード・URL・アプリに基づく | 興味関心の精密なターゲティング |
| 自社データ(顧客リスト) | CRMデータやサイト訪問者 | リマーケティング、既存顧客の除外 |
| Googleオーディエンス | 興味関心、購買意向、ライフイベント | 幅広い潜在層へのアプローチ |
類似セグメントの活用
類似セグメントは、Meta広告のLookalike Audienceに近い機能です。既存の顧客リストやコンバージョンユーザーのリストをシードとして、類似する特徴を持つ新規ユーザーにリーチできます。
類似度は「類似性の高いユーザーに限定」「バランス重視」「幅広いユーザーにリーチ」の3段階から選択可能です。初期は「バランス」から始め、成果を見ながら調整するのが実務上の定石です。
シードリストの質が成果を大きく左右します。できるだけLTVの高い顧客やコンバージョンユーザーのリストを使いましょう。リストの件数は最低100件の一致ユーザーが必要で、精度を高めるには1,000件以上が推奨されています。
オーディエンス設計のヒント
一つのアセットグループに複数のオーディエンスを設定できます。ただし、オーディエンス同士が重複すると機械学習の効率が下がるため、以下の点に注意してください。
- 既存顧客リストは除外設定に使う(新規獲得が目的の場合)
- 類似セグメントとカスタムセグメントを同一グループに混在させない
- リマーケティングは別のアセットグループで分ける
運用開始時の設定フロー
デマンドジェネレーションキャンペーンの立ち上げ手順を整理します。
Step 1: キャンペーン作成
Google広告の管理画面から「キャンペーンを作成」を選択し、目標に「販売促進」「見込み顧客の獲得」「ウェブサイトのトラフィック」「商品やブランドの比較検討」のいずれかを選びます。キャンペーンタイプで「デマンドジェネレーション」を選択してください。
Step 2: 予算と入札戦略
入札戦略は「コンバージョン数の最大化」「目標コンバージョン単価(tCPA)」「コンバージョン値の最大化」「目標ROAS」などから選択します。立ち上げ初期はコンバージョンデータが少ないため、「コンバージョン数の最大化」で開始し、十分なデータが蓄積されてからtCPAや目標ROASに移行するのが安定した進め方です。
日予算は、目標CPAの15倍以上を目安に設定します。機械学習の学習期間(通常2〜4週間)は、頻繁な変更を避けてください。
Step 3: オーディエンス設定
アセットグループごとにオーディエンスを設定します。まずは類似セグメントまたはカスタムセグメントで開始し、配信量とCPAのバランスを見ながら調整します。
Step 4: クリエイティブの登録
画像と動画のアセットを登録します。前述の仕様に従い、各アスペクト比を最低1種類ずつ用意してください。見出し(最大5個)、説明文(最大5個)、ロゴ、最終ページURLもあわせて設定します。
プレビュー機能で各配信面での表示を確認できます。特にYouTube ShortsとDiscoverでの見え方は必ずチェックしてください。
Step 5: コンバージョン計測の確認
デマンドジェネレーションはビュースルーコンバージョン(VTC)の比率が高くなる傾向があります。アカウントのコンバージョン設定で、計測ウィンドウが適切に設定されているか事前に確認しましょう。
デフォルトでは、クリック後30日・エンゲージドビュー後3日のウィンドウが設定されています。
まとめ
デマンドジェネレーションキャンペーンは、GDN統合により検索以外のほぼすべてのGoogle配信面をカバーするキャンペーンタイプへと進化しました。チャネルコントロールで配信面を個別に制御でき、類似セグメントによる精度の高いオーディエンス設計が可能です。
P-MAXとの使い分けは「検索面が必要かどうか」と「配信面の制御が必要かどうか」が判断軸になります。P-MAXで検索を含む全面をカバーしつつ、デマンドジェネレーションでビジュアル面の訴求を強化する併用も有効です。
既存のGDNキャンペーンを運用している場合は、2027年の完全統合に先立ち、移行ツールが利用可能になった段階で早めに移行を進めておくことを推奨します。
参照元
運用型広告のコンサルタント。Google広告・Meta広告・Yahoo!広告を中心に10年以上の実務経験。