この記事でわかること
コンバージョンの急増は、成果ではなく計測の問題であることがあります。媒体・GA4・自社データの3つを見比べて、二重計上、ボットによる登録、計測設定の変更、計上日のずれを切り分ける手順を、実例と公式ヘルプをもとに解説します。
生成AIによる要約
増えたコンバージョンは本物か
コンバージョンが減ったときは、誰もが原因を探します。一方で、急に増えたときは「施策が効いた」と受け止められがちです。しかし、増加の原因が計測の不具合やボットであることは珍しくありません。
偽のコンバージョンは、レポートを狂わせるだけでは済みません。自動入札は計測されたコンバージョンを手がかりに入札を調整します。実在しない成果を学習すると、成果の出ない配信先に予算が寄っていきます。
本記事では、コンバージョンの急増が本物かどうかを確かめる手順を整理します。筆者が実際に調べた事例を、社名と数値を伏せて紹介しながら進めます。
まず3つの数字を見比べる
最初にやることは、同じ期間の件数を3つの場所で見比べることです。
- 媒体の管理画面: Google広告やMeta広告などのコンバージョン数
- GA4: 購入や申込のキーイベントの件数
- 自社のデータ: 受注管理や顧客管理のシステムにある、実際の注文・申込・会員登録の件数
3つ目がいちばん重要です。媒体とGA4はどちらもタグで計測するため、同じ不具合を一緒に抱えることがあります。タグを通らない自社のデータと突き合わせて、初めて増加が本物かを判断できます。
媒体の数字は、GA4より大きく出ることが多いです。ビュースルーや端末をまたいだコンバージョンを含み、計上の考え方も違うためです。比べるのは絶対数ではなく、普段の比率から急に変わったかどうかです。
原因1|同じコンバージョンを二度数えている
もっともよくある原因が二重計上です。完了ページを再読み込みしたり、ブラウザの「戻る」で完了ページに戻ったりすると、タグがもう一度動きます。同じページにタグが二重に設置されている場合も同じです。
筆者が調べた事例を3つ紹介します。
- 同じ受注の購入イベントが何度も送られた: あるECサイトで、同じ受注IDの購入イベントが複数回送られている受注が、ある日から見つかりました。その日のGA4の売上は、実際より大幅に多く見えていました。ただし後日に集計し直すと重複は見当たらず、原因は特定できていません。重複は、気づいた時点で記録を残しておくことが大切です
- 完了ページの再読み込みを見分けられない: ある資料請求フォームでは、申込ごとの固有IDをどこにも送っていませんでした。完了ページの表示回数がそのままコンバージョン数になり、再読み込みや再訪による重複を後から取り除けませんでした
- ページの仕組みの都合でタグが二重に動いた: 画面を切り替えるときにページ全体を読み込み直さないサイトでは、URLの変化を合図にタグを動かします。この合図が、ページを開いた直後の内部処理にも反応し、申込のイベントが二重に送られていました
取引IDで重複を防ぐ
二重計上を防ぐ基本は、注文や申込ごとに固有のIDを送ることです。主要な計測ツールは、同じIDのコンバージョンを重複として扱う仕組みを持っています。
- Google広告: 同じコンバージョンアクションに同じ取引IDが届くと、2件目は数えません。IDは注文ごとに一意で、個人情報を含めないことが求められています
- GA4: 購入イベントの transaction_id が同じものを重複として除きます。ウェブのデータストリームが対象で、アプリは対象外です
- Meta: ピクセルとコンバージョンAPIの両方で送る場合に重複を除きます。ピクセルの eventID と API の event_id、イベント名がそろったものが対象です
注意したいのは、IDの値です。GA4のヘルプによると、transaction_id が空文字だと、すべての購入が重複として扱われます。固定の値を入れた場合も、実際より大幅に少なく数えられます。IDは送っているだけでなく、注文ごとに違う値になっているかまで確かめます。
重複を確かめる方法
GA4では、探索レポートで取引IDのディメンションごとに、購入イベントの数を並べます。1つのIDに2件以上のイベントがあれば重複です。BigQueryにエクスポートしている場合は、transaction_id ごとに purchase イベントを数えます。
重複が見つかったら、発生した時刻の間隔を見ます。数秒〜数分の間隔なら、タグの多重発火やページの再読み込みが疑われます。重複が始まった日時は、タグやサイトの変更日と照らし合わせます。
カウント方法の設定も確認する
コンバージョンの数え方の設定によっても、件数は変わります。
- Google広告: コンバージョンアクションごとに数え方を選べます。発生をすべて数える設定と、広告クリック1回につき1回だけ数える設定です。ヘルプでは、前者は販売、後者はリード獲得に向くとされています
- GA4: キーイベントごとに「イベントごとに1回」と「セッションごとに1回」を選べます。1セッションで5回起きた場合、前者は5件、後者は1件です
資料請求や問い合わせのアクションが、発生をすべて数える設定になっていると、同じ人の再送信がそのまま件数に乗ります。なお、Google広告でカウント方法を変えても、過去のコンバージョンは変わりません。
原因2|ボットや不正な登録
会員登録やフォーム送信は、プログラムで自動的に行えます。ボットによる大量の登録が、コンバージョンの急増として現れることがあります。
筆者が調べたあるECサイトでは、ある月の新規会員登録が通常の月を大きく上回りました。調べると、クレジットカードの不正利用を探る攻撃の一環として、ボットによる登録がまとまって含まれていました。サイト側ではすでに検知され、該当のアカウントは凍結されていました。
この事例で目を引いたのは、ボットの登録がGA4の登録完了イベントにほとんど現れなかったことです。ボットはタグを実行しないことがあるため、GA4や媒体だけを見ていると気づけません。逆に、自社のデータだけで「登録が急増した」と判断すると、広告の成果と取り違えるおそれがあります。
ボットの登録には、次のような特徴がありました。
- 短い時間帯に登録が集中している
- 性別や生まれ年が、不自然なほど均等に散らばっている
- 会社名などの任意項目が空欄ばかり
- 登録してから1分以内のログインが多い
計測ツールの除外は既知のボットまで
GA4は、既知のボットやスパイダーのトラフィックを自動で除外します。判定にはGoogle独自の調査と、IABの国際的なボットのリストが使われます。ただし、除外の対象は既知のボットに限られます。除外をオフにすることも、除外された量を確かめることもできません。
Google広告では、ボットによるクリックなどは無効なクリックとして、レポートと請求から自動で除かれます。ただしヘルプによると、クリックが除かれても、そこから生まれたコンバージョンは残ることがあります。まれに、コンバージョン数がクリック数を上回るのはそのためです。
ボットの登録を減らすには、フォームにreCAPTCHAなどの対策を入れるのが基本です。広告側では、審査を通った有効な申込だけをオフラインコンバージョンとして返す方法もあります。
原因3|計測の設定が変わった
コンバージョンが増えた日の前後に、計測まわりの変更がなかったかを確認します。よくあるのは次のような変更です。
- タグ管理ツールで新しいバージョンを公開した
- 購入完了ページなど、サイトの改修をリリースした
- コンバージョンアクションを追加して、入札に使うコンバージョンに含めた
- コンバージョンAPIや拡張コンバージョンを導入した
たとえば、ピクセルとコンバージョンAPIを両方使い始めたのに、イベントIDを送っていなかったとします。この場合、同じ購入がブラウザとサーバーから1件ずつ届き、重複として除かれません。購入完了のアクションが2つあり、両方が入札に使われている場合も、1件の購入が2件に数えられます。
変更の有無は、媒体の変更履歴とタグ管理ツールの公開履歴で確かめられます。サイトのリリースは、開発の担当者に日時を確認するのが確実です。
原因4|後から過去の日付が増える
Google広告の標準の列は、コンバージョンを広告がクリックされた日に計上します。月曜のクリックから金曜に購入があれば、その購入は月曜の数字に加わります。そのため、数日前の数字が後から増えていくことがあります。
これは不具合ではありませんが、「先週の数字が急に良くなった」と見えることがあります。コンバージョンが実際に起きた日で見たい場合は、「コンバージョン(コンバージョンの日時別)」の列を使います。
確認の順番
ここまでの内容を、確認の順番にまとめます。
- 媒体・GA4・自社データの3つで、同じ期間の件数を見比べる
- 増え始めた日時を特定し、タグ・サイト・媒体の設定変更の日と照らし合わせる
- 取引IDごとのイベント数を数え、重複がないかを確認する
- 取引IDが注文ごとに違う値になっているかを確認する
- 媒体とGA4のカウント方法の設定を確認する
- 自社データで、登録の時間帯や属性に不自然な偏りがないかを確認する
- 媒体の数字だけが増えている場合は、計上日の考え方の違いを疑う
原因がわかったら、入札への影響を抑える
計測の不具合を直しても、誤ったコンバージョンはすでに自動入札の学習に入っています。Google広告には、コンバージョンデータに問題があった期間を自動入札の学習から外す「データの除外」があります。ヘルプでは、タグの設置が正しくないためにコンバージョン数が不正確な場合なども、使う場面として挙げられています。
ただし、データの除外はレポートの数字を直すものではありません。レポートには誤ったコンバージョンが残るので、社内やクライアントへの報告では、影響した期間と件数を別に添えておきます。
運用メモ 急増に気づいたら、原因がわかるまで目標CPAや予算を大きく動かさないのが安全です。偽のコンバージョンで良く見えている数字をもとに予算を増やすと、不具合が直った時点で成果が急落したように見えてしまいます。
まとめ
コンバージョンの急増は、まず計測を疑うところから始めます。媒体・GA4・自社データの3つを見比べれば、どこで増えたかが分かり、疑う原因を絞れます。
原因として多いのは、二重計上、ボットや不正な登録、計測設定の変更、計上日のずれの4つです。普段から取引IDを送り、変更の履歴を残しておくと、急増に気づいたときに早く切り分けられます。
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参照元
- トランザクション ID を使用してコンバージョンの重複を抑える - Google 広告 ヘルプ
- [GA4] トランザクション ID を使用してキーイベントの重複を抑える - アナリティクス ヘルプ
- Handling Duplicate Pixel and Conversions API Events - Meta for Developers
- コンバージョンのカウント方法について - Google 広告 ヘルプ
- キーイベントのカウント方法を変更する - アナリティクス ヘルプ
- 既知の bot トラフィックの除外 - アナリティクス ヘルプ
- 無効なクリック: 定義 - Google 広告 ヘルプ
- 新しい列を使ってコンバージョンを日時別に把握する - Google 広告 ヘルプ
- コンバージョン データに問題が発生した場合にデータ除外を使用する - Google 広告 ヘルプ
ryottaman
広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。
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