従来の競合キーワード入札の限界
競合他社のブランド名を検索キーワードとして入札する「競合入札」は、広告運用者にとって定番の戦術です。しかし、この手法には構造的な課題があります。
競合ブランド名で検索しているユーザーは、すでにその競合の購入をほぼ決めている状態です。購入直前の意思決定を覆すのは難しく、クリック単価は高いのにコンバージョン率が低い、という結果になりがちです。
この課題に対して、より効率的に競合のユーザーを獲得する2つのアプローチがあります。Demand Genキャンペーンによる上流でのアプローチと、ネガティブインテント・コンクエスティングによる乗り換え層の獲得です。
アプローチ1:Demand Genで競合検索者にリーチする
1つ目のアプローチは、Demand Genキャンペーンのカスタムセグメント機能を活用して、競合を検索したことのあるユーザーに検索広告以外の面でリーチする方法です。
仕組み
Google広告のDemand Genキャンペーンは、YouTube、Discover、Gmailにまたがって広告を配信するキャンペーンタイプです。
このキャンペーンのカスタムセグメント機能を使うと、「Googleで特定のキーワードを検索したユーザー」をターゲティングできます。ここに競合他社のブランド名を設定することで、競合を調べたことのあるユーザーに対して、検索広告ではなくYouTubeやDiscoverの面でリーチできます。
検索広告で競合キーワードに入札するよりも低いクリック単価で、同じ検索意図を持つユーザーにアプローチできる点がメリットです。
設定手順
- Demand Genキャンペーンを作成する
- オーディエンスセグメントで「カスタムセグメント」を選択する
- 「Google検索で以下のキーワードを検索したユーザー」に競合ブランド名を入力する
- 類似セグメント(Lookalike)も併用して、競合ユーザーに近い属性のユーザーにもリーチを広げる
クリエイティブのポイント
Demand Genは検索広告とは異なり、ビジュアルで訴求する配信面です。動画や画像のクリエイティブが成果を左右します。
競合との差別化ポイントを視覚的に伝えるクリエイティブを用意しましょう。自社の強みを端的に示す比較表や、導入事例の動画などが効果的です。
ランディングページでも、競合からの乗り換えを意識した構成が重要です。「なぜ自社を選ぶべきか」を明確に伝え、第三者の評価やユーザーレビューなどの社会的証明を配置します。
運用メモ Demand Genのカスタムセグメントに設定する競合名は、ブランド名だけでなく「(競合名) 代替」「(競合名) 比較」なども含めると、検討段階のユーザーへのリーチが広がります。
アプローチ2:ネガティブインテント・コンクエスティング
2つ目のアプローチは、競合に不満を感じているユーザーや、代替手段を探しているユーザーを検索広告で捕捉する方法です。
考え方
ネガティブインテント・コンクエスティングとは、競合に対して不満を感じている、または代替手段を探しているユーザーを狙う手法です。
「〇〇の代わり」「〇〇より安い」「〇〇以外のおすすめ」「〇〇 解約」といった検索クエリは、ユーザーが競合からの乗り換えを積極的に検討しているシグナルです。このインテントに応える広告を表示することで、高いコンバージョン率が期待できます。
キーワード設計
ネガティブインテントのキーワードパターンは主に以下の4つです。
- 代替系:「〇〇 代わり」「〇〇 代替」「〇〇みたいなサービス」
- 価格系:「〇〇より安い」「〇〇 高い」「〇〇 料金 不満」
- 不満系:「〇〇 使いにくい」「〇〇 サポート 悪い」「〇〇 解約」
- 比較系:「〇〇 vs △△」「〇〇 比較」「〇〇 乗り換え」
これらのキーワードバリエーションを1つの広告グループにまとめ、専用の広告文とランディングページを用意します。
広告文のポイント
広告文では、競合の具体的な弱点(価格の高さ、サポートの質、機能の不足など)を意識しつつ、自社がそれをどう解決するかを訴求します。
ただし、広告文中で競合ブランド名を直接記載することは避けましょう。商標ポリシーに抵触するリスクがあります。「乗り換えで初期費用無料」「シンプルな料金体系」など、自社の強みを前面に出す表現を使います。
ランディングページの設計
ネガティブインテントで流入したユーザーは、具体的な不満を持っています。ランディングページでは、その不満に対する解決策を明確に提示する必要があります。
- 競合との機能比較表(自社が優位な点を中心に)
- 乗り換えユーザーの声やケーススタディ
- 移行の簡単さを示すステップ説明
- 初期費用の割引や無料トライアルなど、乗り換えのハードルを下げるオファー
2つのアプローチの使い分け
| 観点 | Demand Gen | ネガティブインテント |
|---|---|---|
| ファネル上の位置 | 認知〜検討初期 | 検討後期〜乗り換え決定前 |
| ユーザーの状態 | 競合を調べている段階 | 競合に不満を感じている段階 |
| 配信面 | YouTube・Discover・Gmail | Google検索 |
| クリック単価 | 比較的低い | 中程度(通常の競合入札よりは低い) |
| クリエイティブ | 動画・画像(ビジュアル重視) | テキスト広告(訴求力重視) |
| 必要なアセット | 高品質な動画・画像素材 | 専用のランディングページ |
この2つは競合するものではなく、補完関係にあります。Demand Genでブランド検討段階のユーザーに認知を広げ、ネガティブインテントで乗り換え意欲の高いユーザーを刈り取る、という組み合わせが効果的です。
実践上の注意点
競合ユーザーの獲得施策を実行する際は、法的リスクとクリック後の体験設計に注意が必要です。
商標に関するリスク
競合ブランド名をキーワードとして入札すること自体は、多くの場合ポリシー上許可されています。しかし、広告文中に競合の商標を使用することは制限される場合があります。
Demand Genのカスタムセグメントに競合名を設定することは問題ありませんが、広告クリエイティブの中で競合を直接批判する表現は避けましょう。
クリック後の体験が成否を分ける
どちらのアプローチも、広告をクリックした後のランディングページ体験が成果を左右します。「なぜ競合ではなく自社を選ぶべきか」の問いに対して、ランディングページが明確な答えを提示できなければ、クリック単価を下げても成果にはつながりません。
差別化ポイント、社会的証明(レビュー、導入実績)、具体的なオファー(無料トライアル、乗り換え割引)の3要素をランディングページに必ず含めましょう。