Claude Codeとは何か
Claude Codeは、ターミナル(コマンドを入力する黒い画面)の中で動くAIエージェントです。ブラウザで使うチャット型のAIと同じ会話ができるうえに、パソコンの中のファイルを読み書きし、コマンドを実行し、その結果を確かめながら処理を進めます。会話だけで完結するAIとの違いは、この「手を動かせる」点にあります。
チャット型AIに「このCSVを集計して」と頼むと、手順やコードの案は返ってきますが、実行するのは人間です。Claude Codeは、その集計を自分で実行し、結果を確認し、必要なら修正まで一続きで行います。人間は目的を伝え、出てきた結果を確かめる役割に回れます。
この「確かめながら進む」点が、実務での使い勝手を大きく変えます。処理を実行し、結果を見て、想定と違えば直す。この試行錯誤の往復を、人間が細かく指示しなくてもClaude Code自身が回します。うまくいかないときに理由を尋ねれば、途中経過をたどって説明も返ってきます。
Claude Codeはもともとエンジニア向けのツールです。ソフトウェア開発の現場で、コードを書いたり直したりするために使われています。そう聞くと自分には縁がないと感じるかもしれません。
しかし、広告運用の実務には、データ分析、スクリプトの運用、定型処理といった「コードで解ける仕事」が意外と多く潜んでいます。媒体からダウンロードしたCSVの整形、BigQueryへの問い合わせ、GASで組んだレポートの保守。どれも、これまではエンジニアや外注に頼るか、手で地道に続けるしかなかった領域です。
そうした仕事を持つマーケターにこそ、Claude Codeは効きます。コードを自分では書けなくても、コードの力を借りられるようになるためです。専門のエンジニアがいないチームでも、定型処理を仕組みに変える道が開けます。
提供形態はコマンドラインのCLI版だけではありません。デスクトップアプリ、Web版、コードエディタ向けの拡張機能もあります。用途や好みに応じて選べます。
| 提供形態 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| CLI版 | ターミナルで動く基本の形 | まず標準的な使い方を覚えたい人 |
| デスクトップアプリ | 独立したアプリとして起動 | ターミナルに抵抗がある人 |
| Web版 | ブラウザから利用 | 環境構築を後回しにしたい人 |
| IDE拡張 | コードエディタに組み込む | 普段からエディタを使う人 |
この記事ではもっとも基本となるCLI版を軸に、導入と使い方を説明します。CLI版で考え方を押さえておけば、他の形態にも応用が効きます。細かな提供形態の違いは変化していくため、最新の一覧は公式ドキュメントで確認してください。
広告運用の実務で何に使えるか
具体的な使いどころを見ていきます。日々の運用の中で「手間はかかるが頭は使わない」処理を、Claude Codeに任せる発想です。代表的なユースケースを整理しました。
| ユースケース | 頼み方の例 | 向いている理由 |
|---|---|---|
| CSVの集計・整形 | 「このCSVを媒体別のCV数で集計して」 | 転記や関数の手間を省ける |
| BigQueryのデータ分析 | 「先月の媒体別CPAをまとめて」 | SQLをAIが書いて実行する |
| GASコードの作成と修正 | 「このスプレッドシートを毎朝集計するGASを書いて」 | 動く形のコードが手に入る |
| レポートスクリプトの保守 | 「エラーで止まったこのスクリプトを直して」 | 原因調査と修正を任せられる |
| 大量ファイルの一括処理 | 「フォルダ内の画像を全部リサイズして」 | 手を動かすと時間がかかる処理を短縮 |
| 定型テキストの生成・変換 | 「この一覧を広告見出しの形式に整えて」 | 決まった変換を反復できる |
共通するのは、いずれも「コードで解けるが、自分ではコードを書けなかった」仕事だという点です。これまで外注したり、諦めて手を動かして続けたりしていた処理に、選択肢が増えます。
たとえば、媒体からダウンロードした生のCSVを毎週決まった形に整える処理を考えます。列の並べ替え、不要な行の除去、媒体名の表記統一、合計行の追加。こうした処理をこれまで手で繰り返していたなら、「この整形手順をスクリプトにして」と一度頼むだけで、次回からはそのスクリプトを走らせるだけになります。整形のルールが変わったときも、変更点を伝えれば直してくれます。
一方で、Claude Codeが得意なことと苦手なことははっきり分かれます。導入前に、この線引きを知っておくと期待値を合わせられます。
| 得意なこと | 苦手・任せきれないこと |
|---|---|
| 定型の集計・整形・変換 | 数値の正しさの最終判断 |
| コードの生成と修正 | 広告戦略そのものの意思決定 |
| エラーの原因調査 | 社内・クライアント固有の暗黙ルール |
| 大量ファイルの反復処理 | 機微な情報の取り扱いの可否判断 |
もちろん、すべてを任せきりにできるわけではありません。頼み方を工夫する必要があり、出てきた結果は自分で確かめることになります。それでも「コードを書けない人がコードを持てる」意味は大きいと考えています。定型処理を人からツールへ移せれば、運用者は判断や設計に時間を割けるようになります。
導入手順
Claude CodeのCLI版を導入する手順を説明します。前提として、Node.jsという実行環境が必要です。パソコンにNode.jsが入っていない場合は、先に公式サイトからインストールしてください。
導入の流れは次のとおりです。
- Node.jsをインストールする(未導入の場合)
- ターミナルを開き、Claude Codeをインストールする
claudeと入力して起動する- 初回起動時にログインし、利用プランと連携する
インストールは、ターミナルで次のコマンドを1行実行します。
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
Node.jsが入っているかどうかは、次のコマンドで確認できます。バージョン番号が表示されれば導入済みです。
node --version
インストールが終わったら、次のコマンドで起動します。
claude
初回はログインを求められます。画面の案内に従ってブラウザで認証を済ませてください。利用にはClaude Pro(月20ドル)以上のサブスクリプション、またはAPIの従量課金が必要です。無料プランでは利用できない点に注意してください。
課金の考え方は、次の2通りです。どちらを選ぶかは、使う頻度と社内の精算方法で決めると良いです。
| 課金方式 | 向いている場面 |
|---|---|
| サブスクリプション(Pro以上) | 毎日のように使い、費用を定額にしたい場合 |
| API従量課金 | 使う頻度が読めず、使った分だけ払いたい場合 |
料金や上位プランの条件は変わることがあります。契約前に料金プランのページで最新の内容を確認してください。
補足
npmはNode.jsに同梱されるコマンドです。Node.jsを入れればnpmも一緒に使えるようになります。インストール時に権限エラーやパスの問題が出る場合は、OSごとに対処が異なります。エラーの内容を控えたうえで、公式ドキュメントの該当箇所を確認してください。
ここで正直にお伝えすると、ターミナルを普段使わない方にとって、最初のうちは戸惑う場面があります。コマンドの入力やインストールの手順そのものに慣れが必要だからです。「誰でもすぐに」とは言えません。ただ、最初の設定を一度越えてしまえば、あとは日本語での対話が中心になります。導入の詳細やOSごとの違いは、公式ドキュメントで最新の手順を確認してください。
最初の一歩
導入できたら、いきなり本番のデータで使わないことをおすすめします。まずは影響の出ない場所で、感覚をつかむところから始めます。安全な練習の手順を用意しました。
具体的には、デスクトップなどに練習用のフォルダを1つ作り、そこにサンプルのCSVファイルを置きます。その状態でClaude Codeを起動し、「このフォルダのCSVを媒体別に集計して」と日本語で頼んでみてください。指示は日本語のままで問題ありません。
ここで押さえておきたいのが、Claude Codeは起動したフォルダを中心に動くという点です。そのフォルダの中のファイルを読み書きするのが基本になります。練習用のフォルダを分けておくと、本番のファイルに触れる心配がなくなります。専用フォルダを作るのは、この安全確保の意味も持っています。
このとき知っておくと安心なのが、Claude Codeはファイルを書き換えたりコマンドを実行したりする前に、確認を求めてくることです。「このコマンドを実行してよいか」と尋ねられたら、内容を見てから承認します。意図しない処理が黙って走ることは基本的にありません。
最初のやり取りは、次のような流れになります。文字だけの対話ですが、途中で確認をはさみながら進む点がイメージできると思います。
claudeを実行してClaude Codeを起動する- 「このフォルダのCSVを媒体別にCV数で集計して」と日本語で入力する
- Claude Codeがフォルダの中身を調べ、処理の方針を示す
- ファイルを読む許可やコマンドの実行許可を求められたら承認する
- 集計結果が表として返り、必要なら追加の依頼を重ねる
最初は集計や整形のような、結果が目で確かめやすい処理から始めるのが良いです。出てきた数字を自分で電卓や管理画面と突き合わせれば、Claude Codeの挙動と限界が体感でわかります。この体感が、後の業務利用での判断の土台になります。
なお、最初の練習では次の点を意識しておくと、つまずきが減ります。
- 練習用フォルダは本番のデータと物理的に分けておく
- サンプルには個人情報や機微な情報を入れない
- 確認画面が出たら、内容を読んでから承認する
- 結果は必ず自分の目で検算する
結果が想定と違っても、慌てる必要はありません。「この集計、媒体名の統一ができていないみたい」と気づいた点を伝えれば、Claude Codeは方針を見直して直します。最初から完璧な結果を狙うより、対話で少しずつ寄せていく使い方のほうが実務には向いています。練習の段階で、この「気づいて伝えて直す」往復に慣れておくと安心です。
業務で使うコツ
練習で感覚をつかんだら、実務で活かすための工夫に進みます。使い込むほど効いてくるポイントを4つ、チェックリストにまとめました。
第一に、依頼は目的から伝えます。「このCSVを集計して」だけより、「媒体ごとの費用対効果を比べたいので、媒体別にCVとCPAを出して」のほうが、意図に沿った結果になります。何のための処理かを共有すると、Claude Codeが妥当な判断を選びやすくなります。頼み方の違いを対比すると、次のようになります。
| あいまいな依頼 | 目的を含めた依頼 |
|---|---|
| 「集計して」 | 「媒体別にCVとCPAを出して、費用対効果を比べたい」 |
| 「グラフにして」 | 「日別のCV推移を折れ線グラフにして、傾向を見たい」 |
| 「直して」 | 「このエラーで止まったので、原因を調べて直したい」 |
第二に、結果の検証を習慣にします。AIが出す結果は、それらしく見えても定義がずれていることがあります。クライアントへの報告に使う数値は、管理画面や既存のレポートと突き合わせて確認してください。
第三に、繰り返す処理はスクリプト化してもらいます。毎回同じ集計を頼むのではなく、「この処理をスクリプトにして」と依頼すれば、次回からはそれを実行するだけで済みます。定型処理ほど、この一手間が効いてきます。
第四に、わからないエラーはそのまま貼って聞きます。スクリプトが途中で止まったときは、表示されたエラーメッセージをそのままClaude Codeに渡してください。原因の調査と修正案の提示まで、まとめて任せられます。エラー文を自分で読み解く必要はなく、貼るだけで会話が前に進みます。
4つのコツに通底するのは、Claude Codeを「一度で正解を出す道具」ではなく「対話で精度を上げていく相棒」として扱う姿勢です。目的を伝え、結果を確かめ、繰り返しは仕組みに変え、詰まったら素直に聞く。この付き合い方に慣れるほど、任せられる範囲は自然と広がっていきます。
注意点
便利さの裏で、押さえておくべき注意点があります。特に情報の扱いと課金は、業務で使う前に確認しておきたい項目です。
| 注意点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 情報セキュリティポリシーの確認 | クライアントデータをAIに渡してよいかを、社内規定とクライアントの合意の両面で確認する |
| コマンド実行の承認 | 実行前の確認画面で、内容を見てから承認する。中身を読まずに承認し続けない |
| 課金プランの把握 | Pro以上のサブスクリプションかAPI従量課金かを理解し、想定外の費用を防ぐ |
| データの外部送信 | ファイルの内容や結果はAIに送信される。機微な情報を含めない運用を基本にする |
| 結果の鵜呑みを避ける | 生成された数値やコードは誤ることがある。重要な用途では必ず検証する |
もっとも重要なのは、最初の項目です。Claude Codeはファイルの内容やコマンドの結果をAIに送信して処理します。そのため、クライアントの個人情報や契約情報を含むデータを扱う判断は、慎重に行う必要があります。所属企業とクライアント双方のAI利用ポリシーを、事前に確認してください。
コマンド実行の承認も軽視できません。確認を求められたときに中身を読まずに承認し続けると、意図しない処理を通してしまう恐れがあります。特にファイルの削除や上書きを伴う処理は、内容をよく見てから判断してください。判断に迷う操作は、承認せずに理由を尋ねるのが安全です。承認を求められたときは、次のように判断すると迷いにくくなります。
補足 業務でクライアントのデータを扱う可能性がある場合は、入力内容が学習に利用されない設定・プランを選べるかも確認しておくと安心です。プランごとのデータの扱いは変わることがあるため、最新の条件は料金プランのページや利用規約で確認してください。契約や社内規定との整合は、導入前に情報システム部門や法務と擦り合わせるのが確実です。
次のステップ
基本の使い方に慣れたら、応用へ進めます。Claude Codeは、外部のツールと連携させることで力を発揮します。広告運用で相性が良い発展先を2つ紹介します。
1つ目は、MCPという仕組みを使ったBigQueryとの接続です。広告データをBigQueryに集約していれば、「先月の媒体別CPAを出して」と日本語で聞くだけで、Claude CodeがSQLを書いて分析します。手順はBigQueryをAIエージェントに接続するで詳しく解説しています。SQLそのものを学びたい場合はBigQueryで広告データを分析するSQL実践が土台になります。
2つ目は、レポートや定例業務の自動化です。Claude CodeにGASのコードを書いてもらえば、毎朝の集計やSlackへの通知を仕組み化できます。GASを使った自動化の考え方はGASで広告レポートを自動化するにまとめています。
この2つに共通するのが、MCPという外部ツール連携の仕組みです。MCPに対応したツールであれば、BigQueryに限らず、さまざまな外部サービスをClaude Codeから扱えるようになります。まずはBigQuery接続で連携の感覚をつかむと、その先の応用が見えてきます。
こうした発展は、Claude Codeを含む生成AIの活用全体の一部です。広告運用での生成AIの位置づけを俯瞰したい場合は、生成AIを広告運用に活かすもあわせてご覧ください。どの施策も、起点になるのは「何を知りたいか」という問いです。ツールに慣れるほど、問いを立てることに時間を使えるようになります。
まとめ
ターミナルで動くAIエージェント「Claude Code」を、広告運用者が使い始めるための入門を整理しました。要点は次のとおりです。
| 観点 | 要点 |
|---|---|
| 位置づけ | ファイルを読み書きし、コマンドを実行し、結果を確かめて進むAI |
| 向いている人 | データ分析・スクリプト運用・定型処理を持つマーケター |
| 導入 | Node.jsを用意し npm install -g @anthropic-ai/claude-code で導入 |
| 利用条件 | Claude Pro(月20ドル)以上、またはAPI従量課金 |
| 始め方 | 練習用フォルダとサンプルCSVで、影響の出ない範囲から |
| 注意 | 情報ポリシーの確認、承認内容の確認、結果の検証 |
全体の流れをたどると、導入から発展までは1本の道でつながっています。焦らず一段ずつ上がれば、無理なく実務へ組み込めます。
Claude Codeの価値は「コードを書けない人がコードの力を持てる」ことにあります。一方で、ターミナルの操作には慣れが必要で、結果を判断する広告指標の理解も欠かせません。まずは影響の小さい処理から試し、確かめながら業務へ広げてみてください。細かい機能やコマンドの仕様は、公式ドキュメントで最新の情報を確認することをおすすめします。