Microsoft Clarityの導入ガイド|無料ヒートマップ・セッション録画ツールの基本設定
Microsoft Clarityとは
Microsoft Clarityは、Microsoftが提供する無料のユーザー行動分析ツールです。ヒートマップとセッション録画の2つを主要機能として備えています。
最大の特徴は、データ量やサイト数に制限がなく完全無料で利用できる点です。類似のヒートマップツールでは無料プランに月間PVの上限が設けられていることが多いですが、Clarityにはそうした制限がありません。
Google Analytics(GA4)が「数値で何が起きているか」を把握するためのツールだとすれば、Clarityは「ユーザーが実際にどう行動しているか」を映像やビジュアルで確認するためのツールです。両者は競合ではなく、補完的な関係にあります。
GA4とClarityの違い
GA4とClarityはそれぞれ得意な領域が異なります。以下の図で両者の役割を比較してください。
たとえば、GA4で「特定のLPのCVRが低い」と分かったとき、Clarityのセッション録画を見ることで「ユーザーがCTAの手前で離脱している」「フォームの入力中に操作を迷っている」といった具体的な原因を把握できます。
導入手順
Clarityの導入はシンプルで、数分あれば完了します。
1. アカウントの作成
Clarity公式サイトにアクセスし、Microsoftアカウント、Googleアカウント、またはFacebookアカウントで無料登録します。すでにMicrosoftアカウントを持っていれば、追加のアカウント作成は不要です。
2. プロジェクトの作成
ログイン後、「New project」からプロジェクトを作成します。サイト名とURLを入力し、サイトのカテゴリを選択するだけで完了です。1つのアカウントで複数のプロジェクト(サイト)を管理できます。
3. タグの設置
データ収集には、Clarityのトラッキングタグをサイトに埋め込む必要があります。主な設置方法は3つあります。
| 設置方法 | 特徴 | 推奨場面 |
|---|---|---|
| 直接設置 | HTMLの<head>内にスクリプトを貼り付け | シンプルなサイト構成の場合 |
| GTM経由 | GoogleタグマネージャーのカスタムHTMLタグとして設置 | GTMで他のタグも管理している場合 |
| プラグイン | WordPress等のCMS向けプラグインで設置 | CMSのプラグイン管理に慣れている場合 |
GTM経由がもっとも管理しやすい方法です。既にGTMを利用しているサイトであれば、カスタムHTMLタグにClarityのスクリプトを貼り付けるだけで設置が完了します。
4. データ収集の確認
タグを設置した後、Clarityのダッシュボードに戻ります。「Setup」ページでタグのステータスが「Active」に変わっていればデータの収集が開始されています。データがダッシュボードに反映されるまで、通常2時間程度かかります。
ダッシュボードの主要指標
Clarityのダッシュボードには、ユーザー行動の問題点を素早く発見するための指標が表示されます。特に注目すべき指標は以下の4つです。
Dead Clicks(デッドクリック)
ユーザーがクリックしたにもかかわらず、何の反応もなかった操作の割合です。リンクや操作可能な要素に見えるデザインなのに実際にはクリックできない場合に多く発生します。デザイン上の誤認を発見する手がかりになります。
Rage Clicks(レイジクリック)
同じ場所を短時間に連打するクリックパターンです。ページの読み込みが遅い場合や、ボタンが反応しないと感じた場合に発生します。ユーザーのフラストレーションを直接的に示す重要な指標です。
Quick Backs(クイックバック)
ページに遷移した後、すぐに戻る操作を行ったセッションの割合です。ユーザーが期待した内容とページの内容が一致しなかった可能性を示唆します。広告のランディングページで高い場合は、広告文とページ内容の整合性を見直す必要があるかもしれません。
Excessive Scrolling(過度なスクロール)
通常よりも大幅にスクロールしたセッションの割合です。ユーザーが目的の情報を見つけられず、ページ内を探し回っている可能性があります。情報の配置やナビゲーションの改善が必要なサインです。
これらの指標が高いページから優先的に改善に取り組むことで、効率よくUX上の問題を解消できます。
プライバシーへの配慮
Clarityではユーザーの操作を録画するため、プライバシーへの配慮が重要です。Clarityにはデフォルトで複数の保護機能が備わっています。
マスキング機能
テキスト入力フィールドの値はデフォルトで記録されません。パスワード、クレジットカード番号、個人情報などが録画に含まれることを防ぎます。マスキングレベルは3段階から選択できます。
| マスキングレベル | 対象 | 推奨場面 |
|---|---|---|
| Strict | すべてのテキストコンテンツをマスキング | 個人情報を扱うサイト |
| Balanced(デフォルト) | 入力フィールドのみマスキング | 一般的なサイト |
| Relaxed | 機密性の高い要素のみマスキング | 公開コンテンツのみのサイト |
ECサイトや会員制サイトでは「Strict」モード、ブログや情報サイトでは「Balanced」モードが適切です。
GDPRへの対応
Clarityは、GDPRやCCPAなどのプライバシー規制への対応をサポートしています。EU圏のユーザーを対象とするサイトでは、Cookie同意バナーとの連携を設定してください。Clarityの管理画面から、同意が得られるまでトラッキングを開始しない設定が可能です。
導入時の注意点
Clarityを使い始める際に把握しておくべき点をまとめます。
- データ反映のタイムラグ:タグ設置後、ダッシュボードにデータが表示されるまで数時間かかります。リアルタイム分析のツールではありません
- サンプリングなし:大規模サイトでもすべてのセッションが記録されます。ただし、データの保持期間は30日です。30日を超えたデータは自動的に削除されます
- パフォーマンスへの影響:Clarityのスクリプトは非同期で読み込まれるため、サイトの表示速度への影響は軽微です。ただし、気になる場合はPageSpeed Insightsなどで導入前後のスコアを比較してください
- SPAへの対応:React、Vue.js、Next.jsなどのSPA(Single Page Application)でも動作します。ページ遷移の自動検知に対応していますが、動作確認は実施してください
Clarityは無料かつ制限のないツールであるため、まずは導入してデータを蓄積し始めることをおすすめします。GA4では把握しきれないユーザーの行動パターンを、ヒートマップやセッション録画で確認する習慣をつけることが、サイト改善の第一歩です。
運用型広告のコンサルタント。Google広告・Meta広告・Yahoo!広告を中心に10年以上の実務経験。