Google広告の管理画面を開くと、最適化案のスコアが表示されます。Meta広告にもアカウントの改善提案が届く。媒体の担当者から「この機能を使いませんか」と連絡が来ることもあるでしょう。
こうした推奨に対して、運用者の反応は大きく二つに分かれるように思うのです。
一つは、「媒体が言うんだから正しいだろう」とそのまま受け入れる人。
もう一つは、「どうせ媒体は広告費を使わせたいだけでしょ」と最初から聞く耳を持たない人。
どちらの気持ちもわかります。でも正直に言えば、どちらも同じ場所に行き着くことが多いんですよね。
鵜呑みにする人が見落としているもの
まず前提として、媒体の推奨がすべて間違っているとは思っていません。むしろ、的を射ていることも少なくないのです。
ただ、一つだけ忘れてはいけないことがあります。媒体の推奨は、「媒体にとって合理的」であることが最優先であって、「あなたのビジネスにとって最適」であることが最優先ではないということです。
たとえば、Google広告の最適化案に「キーワードのマッチタイプを部分一致に変更しましょう」という提案が出ることがあります。これ自体は、機械学習の活用という観点では正しい方向性です。でも、月額予算が限られているアカウントで無条件に部分一致を広げれば、意図しない検索語句に予算が流れるリスクがある。
あるいは、Meta広告の担当者から「Advantage+ショッピングキャンペーンに切り替えませんか」と提案されることがあります。たしかに実績が出ている事例も多い。でも、それが今のアカウント構造や商材特性に合うかどうかは、別の話なんですよね。
同じ推奨でも、「提案のロジック」と「確認すべき自社の条件」は分けて見たほうがいい。よくある2つの提案を並べると、構造が見えやすくなります。
| 媒体の提案 | 提案のロジック(媒体側) | 確認すべき自社の条件 |
|---|---|---|
| 部分一致への変更 | 機械学習に幅広い検索語句を渡し、配信機会を広げたい | 予算規模と許容CPA。意図しない検索語句に予算が流れないか |
| Advantage+ショッピングへの切り替え | 自動化プロダクトの利用率を高め、配信を最適化したい | 現在のアカウント構造や商材特性と噛み合うか。既存の勝ち筋を崩さないか |
媒体側の提案には、「この機能の利用率を上げたい」「予算の引き上げにつなげたい」という意図が構造的に含まれています。誰かを責めたいわけではなくて、ビジネスモデルとしてそうなっているということです。この構造については、管理画面の自己採点の仕組みを扱った姉妹コラム運用型広告の管理画面は、なぜ「自己採点」なのかでも掘り下げています。その構造を理解しないまま推奨を受け入れ続けると、いつの間にか「媒体にとって都合のいいアカウント」ができあがってしまう。
全否定する人が手放しているもの
一方で、媒体の推奨をすべて疑ってかかる人にも、見えなくなっているものがあると思うのです。
ここ数年で、媒体側の機械学習は本当に進化しました。P-MAXやAdvantage+のような自動化キャンペーンが出てきた当初は、正直なところ「ブラックボックスすぎる」と感じていた運用者も多かったと思います。僕自身もそうでした。
でも、実際に検証してみると、手動で細かく設定していた頃よりも良い結果が出るケースが増えてきているのも事実です。特にコンバージョンデータが十分に蓄積されているアカウントでは、機械学習に任せたほうが人間の判断より精度が高い場面が確実にある。
「媒体の言うことは聞かない」というスタンスを貫くことで、本来得られたはずの成果を逃している可能性がある。これは、鵜呑みにするのとは逆の方向で、同じだけの機会損失を生んでいるのではないでしょうか。
もう一つ気になるのは、全否定する人の中に「自分のやり方が正しい」という確信が強すぎるケースが少なからずあることです。
たとえば、部分一致とスマート自動入札の組み合わせやAdvantage+ショッピングは、かつての常識では「制御を手放す危険な選択」でした。でも今は、条件が揃えば有力な選択肢になっています。過去の前提のまま拒否し続けると、更新された事実を取りこぼしてしまうのです。
「判断する」という仕事を手放さない
ここまで書いてきて、結局のところ何が問題なのかと言えば、「自分の頭で判断すること」を放棄しているという点で、鵜呑みも全否定も同じなんですよね。
鵜呑みにする人は、判断を媒体に委ねている。全否定する人は、「聞かない」という判断を固定化することで、個別に考えることをやめている。どちらも、目の前の提案に対して「これは自分のアカウントにとってどうか」と問うプロセスを省略してしまっている。
僕が大事だと思うのは、媒体の推奨に対して「なぜこの提案が出ているのか」を考える習慣を持つことです。
最適化案にはそれぞれロジックがあります。媒体担当者の提案にも背景があります。そのロジックや背景を理解した上で、「自分のアカウントの状況ではどうか」「今のフェーズでは優先すべきか」を判断する。採用するにしても見送るにしても、理由を自分の言葉で説明できる状態であること。それが運用者としての仕事の核だと思うのです。
具体的には、推奨が出たときにこの順番で考えるといいかもしれません。
- この提案は何を最適化しようとしているのかを確認する
- それは自分が追いかけているKPIと一致しているかを照らし合わせる
- 一致しているなら、小さくテストしてみる
- 一致していないなら、なぜ一致しないのかを言語化して見送る
図にすると、こんな流れです。
このプロセスを繰り返すことで、媒体の推奨を「判断材料の一つ」として活用できるようになります。鵜呑みでも全否定でもない、第三の選択肢です。
問われているのは、向き合う姿勢
運用型広告の世界は、毎年のように新しい機能やプロダクトが出てきます。媒体側の推奨も、その都度アップデートされていきます。
その変化に対して、「全部受け入れる」でも「全部拒否する」でもなく、一つひとつに対して「自分はどう考えるか」を持ち続けること。正直、これは面倒なプロセスです。でも、その面倒さを引き受けることが、運用者としての価値そのものではないでしょうか。
媒体の推奨は、あくまでインプットの一つにすぎません。それを自分のフィルターを通してアウトプットに変える。そのフィルターの精度を上げ続けることが、この仕事をやっていく上で一番大事なことだと、僕は思っています。