この記事でわかること
管理画面の数字に一喜一憂し、通知が気になって集中できない。そんな運用者の悩みと、ユーザーがなぜその行動をとるのかという問いの両方に向けて、生命科学者・高橋祥子さんの『すべて本能のせい』の読みどころを整理します。
生成AIによる要約
朝いちばんに管理画面を開き、前日のCPAが悪ければ一日中落ち着かない。Slackの通知が鳴るたびに手が止まり、提案書が進まない。広告運用の仕事は、こうした小さな消耗が積み重なりやすい仕事です。
もう1つ、運用者がいつも向き合っている問いがあります。ユーザーはなぜ、その広告をクリックしたのか。なぜ、いつも同じ店で買うのか。
この記事は、読者の課題から選ぶ本の紹介です。目次と、出版社のWebメディアで公開されている抜粋記事をもとに、運用者の視点で読みどころを整理します。今回取り上げるのは、生命科学者の高橋祥子さんが2026年9月に出した『すべて本能のせい 科学的に正しい脳との付き合いかた』(ダイヤモンド社)です。
本の詳細はAmazonの商品ページで確認できます。この記事には、Amazonアソシエイト・プログラムのアフィリエイトリンクを含みます。
どんな本か
本の立場は、タイトルのとおりです。食べすぎやスマホ依存といった悩みは、性格や意志の弱さのせいではない。人間の誰もが持つ本能が、現代の環境でうまく働かなくなった「本能のバグ」だ、と著者は説明します。
背景にあるのは、狩猟採集の時代に合わせてできた脳と、今の環境とのずれです。本では、これを進化的なミスマッチとして扱っています。
構成は5章です。
- 生きのびるための脳
- 集団で生きるということ
- なぜ私たちは生きづらいのか
- 「わかったつもり」で生きている
- 人間にしかできないことは何か
出版社の目次によれば、第1章は過食や目先の報酬への反応、嫌なことを忘れられない傾向、慢性的なストレスを扱います。第2章は他人の目や同調、第4章は思い込みや習慣化、スマホ依存がテーマです。
以下で紹介する仕組みの説明は、すべて著者によるものです。
運用者の悩みとして読む
集中できないのは、意志が弱いからではない
ダイヤモンド・オンラインの抜粋記事で、著者は先延ばしを意志の弱さではなく脳の仕組みとして説明しています。脳は、遠い将来の大きな報酬より、目の前の小さな報酬を優先しやすいという説明です。
対策として挙げられているのは、気合いではなく環境の設計です。スマホを別の部屋に置く、通知を切る、目標を小さく分けるといった方法が紹介されています。
ここからは筆者の読み替えです。通知が鳴るたびに管理画面を確かめてしまうのは、運用者の性格の問題ではないのかもしれません。集中したい時間帯は通知を切る。数字を見る時刻を決めておく。そうした仕組みで守るほうが、自分を責めるより現実的です。
終わりの見えない緊張は、それだけで消耗する
別の抜粋記事では、リモートワークのしんどさが取り上げられています。本来、ストレスへの反応は危険が去れば収まるようにできています。ところが今は仕事の区切りがあいまいで、終わりの見えない緊張が続きやすい、と著者は説明します。
広告は、夜も週末も配信され続けます。数字はいつでも見られます。運用という仕事は、この「区切りのなさ」を抱えやすい仕事だと筆者は考えます。本は広告運用の仕事に触れているわけではありませんが、自分の働き方を見直すきっかけにはなりそうです。
他社と比べて焦るのも、社会的な本能
第2章と第3章は、他人の目が気になること、承認されたい気持ち、他人との比較を扱います。集団で生きてきた人間にとって、周りからの評価は生き残りに関わる情報だった、という説明です。
同業他社の事例や、SNSで流れてくる成功談と比べて焦るのは、珍しいことではありません。筆者の解釈ですが、それを本能だと知っているだけでも、焦りと少し距離をとれます。
ユーザー理解として読む
この本は、自分自身だけでなく、広告を見る側の人を考える手がかりにもなります。本はマーケティングの本ではないので、ここからの当てはめはすべて筆者の読み替えです。
人は周りに合わせて動く
抜粋記事では、人が他人の意見に同調しやすい理由が説明されています。他人の行動をまねて学ぶ仕組みや、周りと同じであることへの報酬が関わっている、という内容です。
広告でレビュー数や利用者数を見せるのは、この性質に沿ったやり方だと言えます。「多くの人が選んでいる」という情報は、判断の近道として働きやすいからです。
人は、分かりやすい説明を好む
別の抜粋記事では、脳は不確実な状態を嫌い、単純で分かりやすい説明を好むと述べられています。一度そう信じると、それに合う情報ばかりを集めやすくなる、とも説明されています。
訴求を詰め込みすぎた広告が伝わりにくいのは、このためかもしれません。1つの広告で伝えることを1つに絞る、という実務の原則とも重なります。
人は、知っているものを選び続ける
未知のものを避けて、いつもと同じものを選ぶ傾向も取り上げられています。脳が未知の状況を危険と判断しやすい、という説明です。
新しいブランドや商品を知ってもらう広告が難しいのは、この傾向を相手にしているからだとも考えられます。いきなり購入を求めるより、まず知っている状態をつくる。認知の施策が要る理由を、クライアントに説明するときの補助線になりそうです。
読むときの注意
この本は生命科学の立場から書かれた一般書です。脳やホルモンの仕組みの説明は著者の見解として読み、医学的な判断が必要な不調は専門家に相談してください。
また、広告やマーケティングを直接扱った本ではありません。ユーザー理解への応用は、読み手の側で行う必要があります。
こんな運用者に向いている
- 数字の上下に気持ちを持っていかれて、疲れやすい
- 通知や細切れの業務で、まとまった思考の時間がとれない
- ユーザーの行動を、ペルソナより一段深いところで理解したい
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参照元
ryottaman
広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。
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