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この記事でわかること
Google アナリティクス ダッシュボードの仕様を公式ヘルプから整理し、データポータル(旧Looker Studio)との使い分けを判断できるようにします。カード5枚の上限、プロパティ内での全体公開、セグメント・API非対応といった制約が、用途をどこまで絞るのかを解説します。
生成AIによる要約
GA4に、プロパティ内でダッシュボードを組める機能が加わりました。スコアカードや折れ線をドラッグ&ドロップで並べ、1画面にまとめて保存できます。データポータル(旧Looker Studio)でやってきたことが、GA4の中で完結するように見えます。
では、いま社内やクライアントに出しているレポートを、これに寄せるべきなのか。結論から書くと、運用型広告のレポートは置き換えられません。ただし置き換えられない理由が、そのまま「どこで効くか」を示しています。公式ヘルプ「Google アナリティクス ダッシュボードについて」の記載をもとに、その線引きを整理します。
GA4の可視化は3層になった
まず、増えたのがどこなのかを押さえます。
| 層 | 役割 | 制約 |
|---|---|---|
| 標準レポート | 決まった切り口の定点観測。ライブラリでコレクションを編集する | 枠組みが決まっており、自由なレイアウトは組めない |
| 探索レポート | 自由形式・ファネル・経路などの深掘り | 1タブにつき1つの手法。複数のグラフを1画面に並べられない |
| ダッシュボード(新) | 複数のカードをグリッド上に配置して1画面に集約 | カード数に上限。セグメント非対応(後述) |
効いてくるのは探索レポートとの差です。探索は分析には強い一方、「見せる」用途では1タブ1グラフの制約が重く、結局データポータルに出す運用になっていました。新しいダッシュボードは、この「並べて見せる」だけのためにGA4の外へ出る必要をなくす機能です。
ヘルプも位置づけを明示しています。保存時にライブラリを経由せず、左側のナビゲーションへ直接公開できる設計です。標準レポートのライブラリ運用とは別系統で動きます。
使えるビジュアライゼーションは6種類
ヘルプが挙げているカードの種類は次の6つです。
| 種類 | 用途・仕様 |
|---|---|
| スコアカード | 主要KPIの概要表示。期間比較を適用した変化率に対応 |
| 表グラフ | 複数ページに対応した表形式 |
| 折れ線グラフ | 指標の推移。日・週・月の粒度に対応 |
| 棒グラフ | 横棒・縦棒でディメンションを比較 |
| ドーナツグラフ | 全体に対する各部分の割合 |
| ファネルグラフ | コンバージョンプロセスの可視化と離脱ポイントの特定 |
散布図、地図、サンキー図といったデータポータルにある表現はありません。ただし、定例レポートで実際に使うグラフは、この6種類でおおむね足ります。探索レポートの「ファネル」がカードとして1画面に置けるようになった点は、探索を使い分けていた人にとって実利があります。
作成はグリッドベースのキャンバスで、ディメンションと指標をキャンバス上に直接ドラッグ&ドロップしてグラフを組み立てます。
制約が用途を決める
ここからが本題です。ヘルプに記載された制約が、この機能の使いどころをかなりはっきり決めています。
カード数の上限
標準プロパティでは1つのダッシュボードにつき最大5枚、プレミアム(360)プロパティで最大30枚です。
無料版で5枚は、データポータルの感覚からするとかなり厳しい制限です。スコアカードを3枚並べたら、残りは2枚しかありません。「レポートを移す」のではなく「KPIを5つに絞る」設計を強制されると考えたほうが実態に合います。裏を返せば、盛りすぎたダッシュボードを作れない仕組みでもあります。
公開は常にプロパティ全体
ヘルプは「公開されたダッシュボードはすべて、プロパティ内で共有されます」と明記しています。個人用の下書きとして持っておく、特定のメンバーにだけ見せる、といった運用はできません。
作成・公開には編集者または管理者のロールが必要で、閲覧はプロパティのアクセス権を持つユーザーであれば可能です。必要なロールがなくても、公開済みのダッシュボードは左側のナビゲーションから確認できます。
この仕様は探索レポートと対照的です。探索は作成者個人のものとして始まり、共有は任意でした。ダッシュボードは公開した時点でプロパティ全員のナビゲーションに並びます。乱立させると、全員の画面が散らかります。
未対応の機能
ヘルプが明示している非対応は3つです。
- API — 作成・取得を自動化できない
- セグメント/コホート — ユーザーを切って比較する分析はできない
- カード単位の比較 — カードごとに異なる比較条件を当てられない
セグメント非対応は、この機能が分析ツールではないことを示しています。探索レポートの代替にはなりません。API非対応は、レポート運用の自動化を組んでいる場合に効いてきます。
データポータルとの構造的な違い
機能の数を比べる前に、性質の違いが3つあります。ここが使い分けの分岐点です。
1つ目はデータソースです。データポータルは多数のコネクタを持ち、GA4・Google広告・スプレッドシート・BigQueryを1つのレポートに同居させられます。GA4内のダッシュボードは、当然ながらGA4のデータだけです。これは機能の優劣ではなく、立っている場所の違いです。GA4はサイト・アプリの計測ツールであって、データの集約基盤ではありません。
2つ目は共有です。データポータルはURLでの共有ができ、閲覧者にGA4のアカウントを要求しません。GA4のダッシュボードは閲覧にプロパティのアクセス権が要ります。社外に配る前提のレポートでは、この差がそのまま可否を決めます。
3つ目は加工の自由度です。計算フィールド、データブレンド、パラメータはデータポータル側の機能です。「広告費÷CV数でCPAを出す」「媒体名の表記ゆれを正規化する」といった加工は、引き続きこの層で行うことになります。
広告レポートは置き換えられない
運用型広告のレポートに最低限必要なものを並べると、答えは自動的に出ます。
- 広告費
- インプレッション・クリック(媒体側の数値)
- 媒体をまたいだ横断集計
- サイト側のコンバージョン
このうちGA4が持っているのは最後の1つだけです。Google広告とリンクしていればGoogle広告の費用は取り込めますが、Meta広告・Yahoo!広告・LINE広告の費用はGA4に入りません。媒体横断の広告レポートは、GA4だけでは原理的に作れません。
用途ごとの置き場所を整理すると、次のようになります。
| 用途 | 適した場所 |
|---|---|
| 媒体横断の広告レポート(費用込み) | データポータル、またはBigQuery+BIツール |
| クライアントへの定期報告 | データポータル(URLで共有できる) |
| サイト側KPIの定点観測 | GA4のダッシュボード |
| 仮説検証の深掘り・セグメント比較 | GA4の探索レポート |
判断の基準は機能の多さではありません。そのレポートに広告費が載るか、社外の人が見るか。どちらかがYesなら、GA4の外に出る必要はこれまでと変わりません。
それでも効く場面
置き換えではなく、次のような場面で効きます。
- GA4しか見ない社内定例。流入・回遊・CVだけを毎週確認する会議なら、データポータルを1枚維持するより、GA4の中に置くほうが手数が減ります
- 探索レポートで組んでいた「見せる用」のタブ。1タブ1グラフの制約で分かれていたものを、1画面にまとめられます
- 全員に同じ数字を見せたいとき。プロパティ全体に公開される仕様は、共有範囲を絞りたい場面では制約ですが、「全員が同じKPIを見る」ことを狙うなら利点になります
- KPIを絞り込む規律が要るとき。カード5枚の制限は、何を主要指標と呼ぶかを決める作業を強制します
逆に、次に当てはまるなら現行のまま維持するのが妥当です。広告費を含む/社外に配る/複数データソースを結合している/計算フィールドに依存している/セグメント比較が要る。
併用の設計
現実的な落としどころは、置き換えでも二重管理でもなく、担当を分けることです。
- サイト側の日次・週次の定点観測をGA4のダッシュボードへ移す。カード5枚に収まるかで、移せるかどうかが決まります
- 費用を含む媒体横断のレポートはデータポータルに残す
- データポータル側から、GA4由来の重複グラフを削る。両方に同じ折れ線が載っている状態を放置すると、数字の食い違いを説明する仕事が増えます
- 定義がずれる箇所(期間、フィルタ、コンバージョンの定義)をどちらかに揃えてから移す
- 公開するダッシュボードの数を決めておく。プロパティ全員のナビゲーションに並ぶため、乱立させると標準レポートが埋もれます
3つ目と5つ目が見落とされがちです。ダッシュボードは増やすより、どちらか一方に寄せて減らすほうが運用が持ちます。
最初にやること
いきなり本番のレポートを移すのではなく、いま維持している定例レポートのうち、GA4のデータだけで完結しているものを1枚だけ作り直してみることをおすすめします。
作成手順は、レポートの左側ナビゲーション上部の[+作成]から[ダッシュボード]を選び、キャンバスにビジュアライゼーションを置いてディメンションと指標をドラッグ&ドロップし、[保存]、[公開]と進みます。公開すると左側のナビゲーションに並びます。
1枚作れば、カード5枚に収まるか、使いたいディメンション・指標が揃っているか、全員に見える状態で問題ないかが、自社の運用で具体的に分かります。そこまで確認してから、移す範囲を決めてください。
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ryottaman
広告代理店で17年、現在は事業会社でインハウスマーケティングを担当しています。
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