需要創造と需要獲得|広告の2つの役割を理解して施策を設計する
広告には2つの根本的な役割がある
広告施策は大きく2つに分けられます。需要創造(Demand Creation) と需要獲得(Demand Capture) です。
需要創造は、まだ商品やサービスを欲しいと思っていないユーザーに対して、関心や欲求を生み出す活動です。需要獲得は、すでに欲しいと思っているユーザーを、自社の購入や問い合わせにつなげる活動です。
この2つはどちらか一方だけでは不十分です。需要獲得だけに注力すると、いずれ獲得できるユーザーが枯渇します。需要創造だけに注力すると、せっかく生まれた需要を競合に取られます。
需要創造と需要獲得の違い
| 観点 | 需要創造 | 需要獲得 |
|---|---|---|
| 対象ユーザー | 潜在層(カテゴリーに関心が薄い) | 顕在層(すでに検索・比較している) |
| 広告の役割 | 課題に気づかせる、ブランドを記憶に残す | 自社を選んでもらう、行動を促す |
| KPI | リーチ、ブランドリフト、認知率 | CPA、ROAS、コンバージョン数 |
| 効果の現れ方 | 緩やか(月〜四半期単位) | 即時的(日〜週単位) |
| 止めた場合 | 長期的にブランド想起が低下 | すぐにコンバージョンが減少 |
なぜ需要創造が軽視されやすいのか
運用型広告の世界では、需要獲得に偏りがちです。理由はシンプルで、効果が測りやすいからです。
検索広告やリターゲティングは、クリックからコンバージョンまでの経路が追えます。CPAやROASで投資対効果を明確に示せるため、社内の承認も得やすい施策です。
一方、需要創造の効果は測りにくい面があります。動画広告を見たユーザーが、半年後に検索して購入した場合、その成果は検索広告に帰属されることが多いです。需要を生み出した広告ではなく、刈り取った広告が評価される構造になっています。
この測定の非対称性が、需要創造の過小評価を招きます。
60:40の法則
IPA(英国広告実務者協会)のデータベースを分析したレス・ビネットとピーター・フィールドの研究によると、広告効果を最大化するには予算の約60%をブランド構築(需要創造)、約40%をパフォーマンス(需要獲得)に配分するのが最適とされています。
ただし、この比率はカテゴリーや事業フェーズによって異なります。
| 事業フェーズ | 需要創造の配分 | 需要獲得の配分 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 70〜80% | 20〜30% | まず認知を作る必要がある |
| 成長期 | 50〜60% | 40〜50% | 認知と獲得をバランスよく |
| 成熟期 | 40〜50% | 50〜60% | 認知基盤があるため獲得寄り |
| 衰退期 | 30〜40% | 60〜70% | 効率重視で絞り込む |
あくまで目安であり、自社の状況に合わせた調整が必要です。
需要創造と需要獲得をつなぐ設計
2つの施策は別々に動かすのではなく、連動させることが重要です。
需要創造→需要獲得の導線を設計する: 動画広告で興味を持ったユーザーが、次に検索したときに検索広告が表示されている状態を作ります。需要創造で使ったキーワードやメッセージと、検索広告のコピーに一貫性を持たせます。
オーディエンスをつなぐ: 動画広告の視聴者リストを作成し、そのリストに対してリターゲティング配信を行います。GA4やMeta Pixelで構築したオーディエンスを、ファネルの下流施策で活用します。
測定のフレームを合わせる: 需要創造の効果を、直接CPAだけで測らない工夫が必要です。ブランドリフト調査、指名検索数の推移、新規ユーザー比率の変化など、複数の指標で評価します。
運用型広告の各媒体はどちらに強いか
| 媒体 | 需要創造 | 需要獲得 | 解説 |
|---|---|---|---|
| Google検索広告 | △ | ◎ | 顕在層の獲得に最も強い |
| Googleディスプレイ | ○ | △ | リーチは広いが精度は低め |
| YouTube広告 | ◎ | △ | 認知・興味喚起に強い |
| Demand Gen | ○ | ○ | 創造と獲得の中間領域 |
| Meta広告 | ◎ | ○ | 潜在層へのリーチとCV両方 |
| LINE広告 | ○ | ○ | 幅広い層への認知向き |
| Yahoo!検索広告 | △ | ◎ | Google同様、顕在層の獲得 |
| リターゲティング全般 | △ | ◎ | 需要獲得の代表的手法 |
一つの媒体が両方の役割を果たせることもあります。Meta広告はブランド認知キャンペーンにもコンバージョンキャンペーンにも使えます。大切なのは、キャンペーンの目的を明確にし、適切なKPIで評価することです。
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参照元
SIGNALZ
運用型広告の実務経験をもとに、体系的なナレッジを発信しています。