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競合・市場リサーチの実務ガイド|広告ライブラリから行政データまで、調べ方の全体像

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リサーチの目的を整理する

競合や市場のリサーチは「なんとなく見ておく」だけでは、時間をかけた割に施策につながりません。調べ始める前に、何のために調べるのかを明確にしておくと、使うべきツールと見るべきデータが絞り込めます。

広告運用の文脈でリサーチが必要になるのは、主に以下のような場面です。

場面知りたいこと主な情報源
新規アカウント立ち上げ競合は誰で、どんな訴求をしているか広告ライブラリ、検索結果の目視
提案書の作成市場規模、業界トレンド、根拠となる数値行政統計、業界レポート
クリエイティブの改善競合がどんな広告を出しているか広告ライブラリ、TikTok Creative Center
入札・予算の見直し競合の出稿状況は変化しているかオークション分析、IS推移
成果停滞時の打開策市場全体のトレンドは変わっていないかGoogle Trends、業界データ

この記事では、広告ライブラリなどの「競合の広告を直接見る方法」、Google広告管理画面の「競合分析機能」、そして行政データや業界レポートを使った「市場を理解する方法」の3つに分けて解説します。

広告ライブラリで競合のクリエイティブを見る

各媒体が公式に提供している広告ライブラリは、競合のクリエイティブを無料で確認できるツールです。アカウント登録なしで使えるものが多く、最初のリサーチ手段として最も手軽です。

Meta広告ライブラリ

Meta広告ライブラリは、FacebookとInstagramで配信中の広告を誰でも閲覧できるツールです。ログイン不要で、誰でもアクセスできます。

広告主名やキーワードで検索し、以下の情報を確認できます。

  • 広告クリエイティブ(画像・動画・カルーセル)
  • 配信開始日
  • 配信プラットフォーム(Facebook / Instagram / Messenger / Audience Network)
  • 広告主のページ情報と作成日

フィルタ機能も充実しており、プラットフォーム別、メディアタイプ別(画像のみ・動画のみ)、アクティブ状態(配信中・停止済み)などで絞り込めます。

実務で特に役立つのは次の2つの視点です。

バリエーション数を見る。 同一広告主が何種類のクリエイティブを同時に配信しているかで、テストの積極度がわかります。10本以上を常時回している競合は、クリエイティブの差し替えサイクルが速い可能性があります。

長期間配信されている広告を見る。 配信開始日が古く、今も配信中の広告は、パフォーマンスが安定している「勝ちクリエイティブ」の可能性が高いです。訴求軸や構成の参考になります。

なお、インプレッション数や広告費は原則として非公開です。社会問題・選挙・政治関連の広告のみ、インプレッション範囲と支出範囲が開示されます。

運用メモ Meta広告ライブラリにはAPIも用意されています。定期的に競合のクリエイティブを収集したい場合は、APIで自動取得する仕組みを構築できます。Meta for Developersへの登録とアクセストークンの取得が必要です。

Google広告の透明性センター

Google広告の透明性センターは、特定の広告主がGoogleの各サービス(検索、YouTube、ディスプレイ等)で掲載した広告を確認できるツールです。

ログイン不要で、広告主名を検索するだけで利用できます。確認できるのは広告クリエイティブ(テキスト・画像)、最後に表示された日時、広告主の認証ステータスなどです。

Meta広告ライブラリと比較すると、フィルタ機能はやや限定的です。キーワード検索ではなく広告主名での検索が基本であり、インプレッション数やクリック数などのパフォーマンス指標は表示されません。

競合の広告見出しや説明文のパターンを把握するのに向いています。「最後に表示された日」から、その広告が現在も配信中かどうかを推測できます。

TikTok Creative Center

TikTok Creative Centerは、TikTok広告の高パフォーマンス事例を閲覧・分析できるツールです。広告アカウント不要、完全無料で利用できます。

Top Ads Dashboardでは、地域・業種・キャンペーン目的でフィルタをかけた上で、リーチ・CTR・動画視聴率・CVRなどの指標で並べ替えができます。

他の広告ライブラリにはない独自の機能として「秒刻みのエンゲージメント分析」があります。個別の広告をクリックして「アナリティクスを見る」を選ぶと、動画内のどのシーンで視聴者の反応が高まり、どこで離脱が起きているかをグラフで確認できます。

動画広告のクリエイティブ制作にあたって、構成やテンポの参考として非常に有用です。

Yahoo!広告・LINE広告

Yahoo!広告(LINEヤフー広告)とLINE広告には、Meta広告ライブラリやTikTok Creative Centerに相当する、第三者が競合のクリエイティブを閲覧できる公式ツールは提供されていません(2026年6月時点)。

これらの媒体における競合調査は、後述するオークション分析やサードパーティツールを併用する形になります。

広告ライブラリの活用まとめ

媒体ツール名特徴
Meta広告ライブラリクリエイティブ・配信期間・プラットフォーム別で確認可能
Google透明性センター広告主名で検索。テキスト広告の見出し確認に向く
TikTokCreative Center秒刻みエンゲージメント分析が独自の強み
Yahoo!なし公式の競合クリエイティブ閲覧ツールなし
LINEなし同上

Google広告の競合分析機能

Google広告の管理画面には、競合の動きを数値で把握できる機能が2つあります。広告ライブラリが「何を出しているか」を見るのに対し、こちらは「どのくらいの存在感で出しているか」を見る手段です。

オークション分析レポート

オークション分析レポートは、同じオークションに参加している競合広告主との相対的な掲載状況を確認できるレポートです。検索・ショッピング・P-MAXキャンペーンで利用できます。

管理画面のキャンペーン・広告グループ・キーワードを選択し、「インサイトとレポート」>「オークション分析」から確認します。

指標意味見方のポイント
インプレッションシェア(IS)表示可能回数のうち実際に表示された割合自社と競合のIS差が出稿の強弱を示す
重複率競合と同時に表示された割合高い相手ほど「同じユーザーを取り合っている」
優位表示シェア自社が競合より上位に出た割合50%を切ると負けている
上部掲載率オーガニック検索より上部に出た割合検索広告の可視性の目安
最上部表示率検索結果の最上位に出た割合ブランドキーワードで低い場合は要注意

実務で重要なのは「変化」を見ることです。特定の競合のISが急上昇した場合、予算増額・入札強化・新規参入の可能性があります。月次で推移を追っておくと、競合の動きに対する対応が後手に回りにくくなります。

注意点として、自社のISが10%未満の場合はデータが表示されません。十分なインプレッションがないキーワードでは、競合分析の精度が下がります。

運用メモ オークション分析のデータはGoogle広告の管理画面からCSVでダウンロードできます。月次でダウンロードし、スプレッドシートに蓄積しておくと、競合ISの推移グラフを自動生成できます。Looker Studioに接続すれば、定点観測のダッシュボード化も可能です。

広告プレビューと診断ツール

特定のキーワードで競合がどんな広告を出しているかを確認するなら、「広告プレビューと診断」ツールが有効です。管理画面の「ツール」メニューからアクセスできます。

地域・デバイス・言語・キーワードを指定すると、そのキーワードの検索結果ページのプレビューが表示されます。競合の広告も表示されるため、見出しや説明文のパターンを確認できます。

シークレットモードで直接検索する方法もありますが、「広告プレビューと診断」のほうが優れています。理由は2つあります。

  • インプレッション数にカウントされないため、自社のデータに影響しない
  • 地域やデバイスを自由に指定でき、自分がいる場所以外の配信状況も確認できる

行政データ・公開統計で市場を理解する

競合の広告を見るだけでなく、その競合が戦っている市場そのものを理解することが、精度の高い提案や戦略設計につながります。

日本の行政機関が公開している統計データは無料で利用でき、提案書や社内レポートの根拠としても使えます。

e-Stat(政府統計の総合窓口)

e-Statは、日本の公的統計データを横断検索できるポータルサイトです。総務省が運営しており、各府省の統計データを一元的に検索・ダウンロードできます。

広告運用の文脈で使える代表的な統計データをいくつか紹介します。

商業動態統計(経済産業省)。 小売業・卸売業の販売額の月次推移が確認できます。ECクライアントの提案時に「業界全体の販売トレンド」を示す根拠として使えます。

家計調査(総務省統計局)。 世帯あたりの品目別支出額がわかります。「ユーザーがこのカテゴリにどれだけお金を使っているか」を定量的に示せるため、広告予算の妥当性を議論する際の補助材料になります。

人口推計・住民基本台帳人口(総務省)。 地域別・年齢別の人口データです。エリアターゲティングの設計や、ターゲット人口の推計に使えます。

特定サービス産業動態統計(経済産業省)。 広告業、情報サービス業、映像・音声・文字情報制作業などの月次売上高が確認できます。広告業界自体の動向把握に向いています。

業界レポート・調査機関のデータ

行政統計は網羅性が高い一方で、特定業界の深い分析には業界専門の調査機関のレポートが適しています。

情報源特徴費用
矢野経済研究所業界別の市場規模レポート。プレスリリースで概要が無料公開要約は無料 / 詳細は有料
富士経済食品・化粧品・ヘルスケア等の市場調査に強い同上
MM総研IT・通信業界に特化した調査データ同上
電通「日本の広告費」媒体別・業種別の広告費の年次推移無料(毎年2月公開)
CCI「インターネット広告市場規模推計」デジタル広告市場の詳細内訳一部無料

提案書に市場規模の数値を引用する際は、プレスリリースや公開レポートの出典を明記します。有料レポートの本文を引用する場合は、著作権と利用条件に留意してください。

Google Trendsは、特定キーワードの検索ボリュームの相対的な推移を無料で確認できるツールです。

広告運用では主に以下の用途で使えます。

  • 季節変動パターンの把握(「引っ越し」「おせち」など、需要のピーク時期を確認)
  • 競合ブランドの認知度推移の比較(最大5キーワードを同時比較可能)
  • 地域別の検索関心度の確認(都道府県・地域レベル)

注意点として、Google Trendsの数値は絶対値ではなく相対値(0〜100のスケール)です。検索ボリュームの実数を知りたい場合は、Google広告のキーワードプランナーを併用します。

SimilarWeb(無料版)

SimilarWebは、競合サイトのトラフィック概算を確認できるサードパーティツールです。無料版でも以下の情報が確認できます。

  • 月間訪問数の概算
  • 流入チャネル別の割合(オーガニック検索、有料検索、SNS、ダイレクト等)
  • 主要な流入元サイト・流出先サイト

有料検索の流入割合が高い競合は、広告投資を積極的に行っている可能性があります。

ただし、無料版では閲覧期間が直近数ヶ月に限定され、地域フィルタも使えません。また、サードパーティの推定値であるため、絶対値の正確性には限界があります。傾向を掴むための参考値として扱うのが適切です。

その他のリサーチ手法

BuiltWithで広告タグの有無を確認する

BuiltWithは、Webサイトが使用している技術スタックを確認できるツールです。Chrome拡張機能を入れると、閲覧中のサイトの技術情報をワンクリックで確認できます。

広告リサーチの観点では、競合サイトにGoogle広告のコンバージョンタグやMeta Pixelが設置されているかどうかを確認できます。「そもそもこの競合はWeb広告を出稿しているのか」を間接的に判断する材料になります。

検索結果の目視確認

ツールに頼らず、実際にGoogleで検索して競合の広告を確認するのも基本的なリサーチ手法です。ただし、通常のブラウザで検索すると、個人の検索履歴やログイン状態に基づいてパーソナライズされた結果が返されます。

シークレットモードを使えばパーソナライズの影響を軽減できますが、IPアドレスに基づく地域情報は排除できません。また、検索するたびにインプレッションが加算されるため、自社の広告データにノイズが入ります。

前述の「広告プレビューと診断」ツールが使える場合は、そちらを推奨します。

リサーチを施策につなげるポイント

リサーチ情報を施策に変換する3ステップ1. 訴求軸を抽出広告ライブラリのクリエイティブを分類価格 / 利便性 / 実績/ 限定感 など→ 未着手の軸を発見2. 変化を把握オークション分析のIS推移を月次で追跡競合ISの急変を検知IS損失の原因を切り分け→ 入札・予算を調整3. 前提を設定行政統計・Trendsで市場の裏付けを取得成長率・需要ピークターゲット人口など→ 提案の根拠に活用3つの視点で整理すると具体的なアクションに落とし込める

リサーチで集めた情報は、そのままでは施策になりません。以下の3つの視点で整理すると、具体的なアクションに落とし込みやすくなります。

競合のクリエイティブから訴求軸を抽出する

広告ライブラリで確認したクリエイティブを眺めるだけでなく、訴求軸を言語化して一覧にします。

たとえば「価格訴求」「利便性訴求」「実績・信頼訴求」「限定感訴求」のように分類すると、自社が手をつけていない訴求軸が見えてきます。競合が全員やっている訴求を外す判断も、訴求軸の一覧があって初めてできます。

オークション分析は「変化」を見る

オークション分析の数値は、単月のスナップショットよりも月次推移のほうが有用です。競合のISが先月から10ポイント上がっていれば、予算増額や新施策の投入があった可能性があります。

自社のIS低下が競合の攻勢によるものなのか、自社の予算不足によるものなのか、原因を切り分けるためにIS損失率(予算)とIS損失率(ランク)も併せて確認してください。

市場データは「前提」として使う

行政統計やGoogle Trendsのデータは、施策の根拠づけに使います。「この市場は年率5%で成長しているから広告投資を増やすべき」「検索需要のピークは3月だから、2月から予算を引き上げる」といった形で、意思決定の前提として位置づけるのが効果的です。

提案書では、市場データをスライドの冒頭に置くと、クライアントや上司が「なぜ今この施策をやるのか」を理解しやすくなります。

定期リサーチのすすめ

競合・市場のリサーチは、新規アカウント立ち上げ時や提案書作成時に集中して行うことが多いですが、定期的に実施するほうが価値は高くなります。

月に一度、30分程度で以下を確認するだけでも、変化の兆しを早期に察知できます。

  • オークション分析レポートの競合IS推移
  • Meta広告ライブラリで主要競合のクリエイティブ本数と新着
  • Google Trendsでメインキーワードの検索関心度

スポット的な深いリサーチは必要なときに行い、定点観測は軽く継続する。この使い分けが、実務でリサーチを機能させるコツです。

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