この記事でわかること
- 粗利率が低い商品ほど効率よく獲得できるため、一律のCPA目標では知らず知らず利益の薄い商品に配信が寄ってしまいます。
- 限界利益を上限とした許容CPAを商品ごとに逆算することで、利益が薄い商品に過度に甘い目標を置く問題が解決します。
- フィードのカスタムラベルに粗利帯を入れて商品をグループ化し、キャンペーンごとに目標ROASを調整する運用に切り替えます。
生成AIによる要約
数年前、あるEC案件のレポートを眺めていて、妙な引っかかりを覚えました。CPAは目標を下回っている。ROASも悪くない。数字だけ見れば、健全な運用に見えます。
でも、クライアントの経理担当者との打ち合わせで、話がかみ合わない瞬間がありました。「広告経由の売上は伸びているのに、利益がついてこない」と言うのです。
その場では答えを持っていませんでした。持ち帰って商品別に配信を並べ替えたとき、ようやく理由が見えました。配信が寄っていたのは、粗利率のいちばん低い商品群だったのです。
僕はそのとき、全商品に一律のCPA目標を置いていました。粗利率が2倍違う商品を、同じ物差しで評価していたわけです。
一律のCPAは、利益の薄い商品を優遇する
CPAは「1件の獲得にいくらかけたか」を表す指標です。ここに商品ごとの利益は含まれていません。
たとえば同じ価格帯の2商品があるとします。片方は粗利率が高く、もう片方は薄い。それでもCPA目標が一律なら、機械は同じ基準で両者を扱います。
問題は、薄利の商品ほど価格訴求やセールと相性がよく、クリック率もコンバージョン率も出やすいことです。結果として、機械は「効率のいい商品」として薄利品に配信を寄せていきます。
CPAの数字は良い。でも、稼いだ1件あたりの利益は小さい。この構造に、僕はしばらく気づけませんでした。
CPAという指標は、売上の入口までしか見ていません。その先の利益は、指標の外側にあります。だから一律のCPA目標は、知らないうちに利益の薄い商品を優遇してしまうのです。
限界利益から、許容できるCPAを逆算する
ここで立ち返りたいのが、限界利益という考え方です。売上から変動費を引いた、1件あたりの利益を指します。
管理会計では、売上から変動費を差し引いたものが限界利益にあたります。そこからさらに固定費を引いたものが営業利益です。まずはこの基本の分解を思い出しておきたいところです。
広告の許容CPAは、この限界利益から逆算できます。1件あたりの限界利益を上回るCPAで獲得し続ければ、売れば売るほど損をします。
だから商品ごとに、限界利益を上限とした許容CPAを引くのが出発点になります。粗利率が2倍違うなら、許容できるCPAも当然2倍近く変わってくるはずです。
一律のCPA目標は、この当たり前の差を消してしまう設定でした。粗利の厚い商品には過度に厳しく、薄い商品には甘い。逆になっていたのです。
商品グループごとに目標を分けるところから始める
とはいえ、いきなり全商品を1つずつ設定し直すのは現実的ではありません。まずは粗利帯でいくつかのグループに束ねるのが実務的です。
たとえば粗利の厚い層、標準的な層、薄い層の3つに分ける。それぞれに許容CPAの目安を引き、キャンペーンや広告グループを分けていきます。
Google広告のスマートショッピングやP-MAXなら、目標ROASを商品グループ単位で調整する方法があります。粗利帯ごとに別のアセットグループを組み、それぞれに目標値を持たせるやり方です。
ここで大事なのは、粒度を上げすぎないことです。グループを増やしすぎると、機械が学習する母数が細切れになり、かえって配信が安定しません。
最初は3つ程度で十分だと思います。粗利の色分けが配信に効いているかを確かめてから、少しずつ調整していく順番がいいはずです。
フィードのカスタムラベルに、粗利帯を持たせる
グループ分けを配信に反映させる具体的な手段が、フィードのカスタムラベルです。Google Merchant Centerでは、商品データにcustom_label_0からcustom_label_4まで、任意の値を持たせられます(出典: Google Merchant Center ヘルプ)。
このラベルに、粗利帯を入れておきます。「high」「mid」「low」のような値を各商品に付けておけば、広告側でその軸で商品グループを切れます。
僕がこの実装をして良かったと感じたのは、粗利の情報を「広告が読める形」に翻訳できたことです。経理の中に閉じていた粗利データが、配信の判断材料になりました。
運用でよくあるのは、粗利という大事な情報が社内の別部署にとどまり、広告に届かない状態です。カスタムラベルは、その橋渡しになります。
ラベルの更新をどう回すかも決めておきたいところです。粗利は仕入れやセールで動きます。フィードの自動更新に粗利帯の再計算を組み込めると、運用が楽になります。
粗利データが広告に来ないとき、どう代わりを立てるか
ただ、粗利データを広告側が受け取れない現場も多いはずです。機密性が高く、社外に出せない。あるいは商品数が多すぎて紐づけが追いつかない。
そういうときは、完璧な粗利でなくても近い代理指標で束ねます。価格帯やカテゴリー、値引き率などは、粗利とゆるく相関することがあります。
たとえば、セール常連の商品群は薄利であることが多い。定価販売が続く商品は、相対的に厚利のことが多い。こうした傾向で仮のグループを作り、まずは分けてみます。
大事なのは、精度より「一律をやめる」という一歩です。おおまかでも粗利の軸を入れれば、利益の薄い商品への偏りに気づける足場ができます。
そして経理や商品部と、少しずつ会話を始めることです。「この3グループだけでいいので粗利帯を教えてほしい」と頼めば、全商品の開示より応じてもらいやすいはずです。
CPAという指標は便利ですが、利益を映していません。今のアカウントで、粗利率が2倍違う商品を同じ目標で評価していないか。明日、商品別に配信を並べ替えて、寄っている先の粗利を確かめてみてください。
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